第七十一話 計器

GPSを設置するヨットがかなり増えてきました。それに加えて、風向風速計とスピード計を
お奨めします。GPSはあっちこっち回るのに非常に役立ちますが、スポーツクルージング派
にとっては、加えて、この二つの計器をつけると俄然面白くなる。クルージング艇には不要
と言う方も多いのですが、GPSを含めて、この三つでいろんな事がわかる。

風向風速計は風の吹く方向と強さが解ります。スピード計はヨットのスピードが解る。この
二つが組み合わす事によって、風の真風向と見かけの風の方向が解る。ヨットは前進しま
すので、風向がそのヨットの動きの影響を受けて、前側へ角度が変わる事になります。
今まで前側から風が吹いていたのに、ヨットが停止すると、風は横から吹いてくる。これが
真風向で、ヨットのスピードが上がってくると、その影響で風は前側に回る。ヨットはこの見
かけの風を見て走りますが、タックしてスピードが落ちると、風は横側に落ちる。風に対して
30度で上っている場合、60度タックすればいいかというとそうは行かない。例えば、左舷
45度から真の風が吹いているとして、ボートスピードが上がって、見かけの風が30度だと
すると、90度タックして、停止すれば右舷から45度の風が吹く、タック前と同じスピードで
走るとすると、右舷30度から見かけの風が吹く。風は常に前へ来る。ヨットによって性能は
違いますが、見かけの風と真風向は違う。見かけの風に対して上っている角度は、真風向
で何度で上っているかが解ります。

GPSには位置を表示する他、スピードと進行角度が解る。ヨットのスピード計は水の流れに
対する速さ、GPSのスピードは移動距離から計算した速さ、この二つの違いで、海水の流れ
が解ります。スピード計が7ノットを示し、GPSが5ノットなら、その差2ノットの潮の流れがある
事になる。ヨットのコンパスが真北を示していても、GPSの進行方向が10度であったり、350
度であある場合がある。その差は潮の流れや風の影響で10度分横に流されている。

風向風速とスピード計のもっと良い使い方は、この風向、風速に対し、自分のヨットがどのくら
いスピードが出るか目で見て明確に解るという事です。いつも、これを見ながら乗っていると、
走っている状態が良く解り、どんなに記憶力の悪い人でも、どの程度走るかが良くわかる。
そして、もし、いつもよりスピードが出ないなら、船底が汚れているかもしれないし、とにかく
いつもの状態が自然と身につきます。人間の感覚は相対的で、あいまいですから、こういう
計器を使って、明確に解るのも面白い。それに、セールのトリミングをして、スピードが上がった
り、下がったり、操作の目安ができる。こういう乗リ方をしていますと、帆走が面白くなります。

もうひとつの効果は、マストトップのウィンデックスを見なくて済みます。マストトップを見上げる
のは首が痛くなりませんか?それで計器を見て、風向がわかりますから、もう上を見上げなくて
も良い。

スポーツクルージングの装備には、少なくとも風向風速とスピードは備えたいと思います。これで
ヨットがもっと面白くなります。あるオーナーの話です。昔、ウィンドサーフィンをやっていたそうです。
時にしびれるような走りをする事がある。こういう経験した時は、この幸福感で2週間は持つ。そう
言っておられました。そのしびれるような快走を求めて、今はヨットでしょっちゅうセーリングされて
います。しびれるのは心で、7ノット出たらしびれるとか、8ノット出たらしびれるとか、そういう事には
なりませんが、計器はより効率良く走る目安にもなり、心が求めるしびれるような感覚を得る手助け
をしてくれます。

クルージング派と称される方々、こういう計器を設置して、セーリングをしてみませんか?きっと、
セーリングそのものが面白いと思うようになります。そして、それを続けて、より良いセーリングを
目指せば、しびれるようなセーリングを得る事ができるようになります。これぞ、ヨットの醍醐味です

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