第八話 リグ

マストのリグにはいろいろあるわけですが、一般的にはスループ、それのトップリグかフラクショナル
リグかのどちらかでしょう。ヨットのデータでI,J,P,Eというのがありますが、これはセールプランです。
Iはデッキからマスト上部のフォアステーの出口までの長さ、Jはフォアステーのデッキの取りつけ部
からマスト前までの長さ。つまり、この二つを掛けて、2で割れば、前側のセールの面積が出ます。
今度はPというのは、マストに黒いテープが貼ってあります。これはブラックバンドと言い、マストの
ブーム設置部からマストトップのブラックバンドまで、Eはブームの前からエンドまで、つまり、PxE÷2
でメインセールの面積が出ます。通常は、他のヨットを比較したり、いろんなデータを計算したりする
場合はこれを使います。そうすると、船のサイズや排水量に対して、セールが大きいとか小さいとか
が解ります。時々、IJPEを出さずに、面積だけを何uや何平方フィートで出している場合がありますが
これでは比較できない。130%ジェノアのヨットと150%ジェノアのヨットを比較しても、条件が異なる
のでは、比較できない。

トップリグはフォアステーもバックステーのマストトップから出ています。つまり、メインセールもジブセ
ールもマストトップまで上がるという事になります。通常、マストの立ち位置はやや後方になり、Eより
Jの方が長い、それにメインセールはマストトップからブームの高さまでですが、ジブはデッキまで来る
という事はジブの方がメインセールより大きいという事になります。

今度はフラクショナルリグ。これはフォアステーがマストトップより少し下から出ています。どのくらい下
かはデザイナー次第ですが、よく9/10とかいう数値が出ていますが、これがフォアステーがマスト
トップからどのくらいの位置から出てくるかが解ります。また、マストの立位置はやや前側に移り、前出
のトップリグよりメインセールが少し大きくなり、ジブが小さくなる。どの程度かはやはりデザイナー次第
ですね。このフラクショナルのデザイン次第ではメインセールの方が大きく、ジブが小さいという事になり
ます。

つまり、トップリグはジブセールを主体にして走り、フラクショナルではメインセールを主体(必ずしもそう
では無いですが)にして走る。帆走中、ブローが来たとします。トップリグはジブを操作した方が反応し
易く、フラクショナルはメインを操作する方が反応しやすい。つまり面積が大きい方が影響も大きいとい
えるでしょう。

そこでコースタルセーリングで、クルーが居ない場合、つまりシングルハンドの場合、しかも、できるだけ
オートパイロットは使わないで自分でできるだけ操作をする事をお奨めしていますので、自分でやる場合
どうしても舵を握ったまま、セールのトリミングをしたい。舵がティラーならば、ジブシートに手が届く、メイン
シートはコクピットにあれば難なく手が届く。でも、片手で舵を持っていますから、もう一方の片手で簡単
にするには、ジブシートをウィンチからはずして出したり、或いは巻いたりするより、メインシートがコクピット
にあって、ブロックのテークルとカムクリートならばより簡単です。

ラット(ステアリングホィール)流行りですが、ラットの場合、ジブシートはさらにちょっとやりにくい。やはり
メインシートの方が扱いやすいです。ただ、最近のヨットはメインシートがキャビンの上にあるヨットが多く
それにストッパーがかかっていて、シートを出すにはストッパーを解除して、出す。これは舵を持ったまま
ではできない。もちろん、オートパイロットを使わずにという条件下でです。

セーリングを楽しむというのは、自分でセーリングの操作をするという事が大切だと思います。何でも機械
に頼るというのは、面白みに欠けてくる。自分で舵を握ってこそ、その反応が感じられ、セールをトリミング
してこそ動きが感じられる。感じる為にヨットに乗ってるわけですから、できるだけ感じた方が良い。

そこで、結論ですが、デイセーリングからコースタルにおけるシングルハンドでの操船の場合、フラクショナ
ルリグで、メインセールを主体にし、メインシートはコクピットに設置。これが良いと思います。

クルーが一人居るなら、トップリグでも良いかもしれません。クルーがジブを、自分がメインを担当する。
クルーが二人なら、それぞれ舵、メイン、ジブと分ける事もできます。

次へ       目次へ