第二十七話 極端な考え方

レーサーは高価なケブラー/マイラーやカーボンセールを何枚も使い、それを数年で買いかえる。
一方、クルージングはダクロンセールを20年も使う。レーサーは最高のセーリングを目指し、クルー
を配して練習し、もっともっとと望む。クルージング派はセーリングの事は殆ど考えないで、旅行した
いと思う。何故、こうも極端にならなければならないのかと不思議に思います。これはちょうど車で
言うなら、F1のレーシングカーか、キャンピングカーのどちらかしか無いような、そんな極端さがあり
ます。

レースをしなさいとは言いません。レースなんかしなくて良い。でも、ちょっとセーリングの工夫をす
れば、もっと楽しくなるのにと残念でなりません。それも難しい事では無く、基本的な事です。そして
大事な事は気持ちの持ち方です。快適に走って、楽しんでやろうとする気持ちを持つ事です。それ
さえあれば、セーリングが楽しくなる。そういう事はレーサーじゃ無いからと、あまり考えない方が
多い。極端な言い方ですが、セール出して動いていれば良い。それでは、ビールでも飲んでなけりゃ
楽しいわけが無い。となりに可愛い女性でも居ればそれで良いかもしれませんが、そうそううまくは
行かない。でも、セーリングに限っては自分次第なのです。

隣にきれいな女性が居ても、うまい手綱さばきで、滑らかにセーリングすると、実にかっこいいじゃな
いですか。うまい手綱さばきは美しいのです。速いヨットとか遅いヨットとか言う前に、滑らかにうまい
手綱さばきをして、快走をしたいと思う事が大切だと思いますね。

私はアレリオン28が最もお気に入りである事は前にも書きました。とても美しいデザインで、こういう
ヨットをうまくさばいて、快走するのが理想です。適度に配されたチークをピカピカにニス塗装し、存在
感はどんな大きなヨットにも負けない。大人のヨットです。こういうヨットだから、のんびりゆっくりで良い
というわけではありません。滑らかに快走するんです。腕も要求されます。だから、面白いんです。
このヨットはそういうヨットです。クラシックですが、帆走性能も高い。遠出するヨットではありません。
遠出なんかしなくても、最高におしゃれなヨットで、最高のセーリングができる。それで充分なのです。

最近、某メーカーの37フィートのヨットが入りました。高いフリーボードで、キャビンは実に広い。ヨット
に住まないかぎり、こんな大きなキャビンが必要だろうか?ずんぐりむっくりした姿は決して美しくない
オーナーは何人も人を連れてきて、クルージングに出かける。典型的なクルージングの乗り方です。
これが悪いとは言いませんが、むしろこれも良いのですが、でも、大勢来る時以外は、このヨットは動
かないのです。こんな事が何年続くだろうか?もうこんな事をベースにして考えるのはやめにしません
か?数年前に典型的外洋艇が入りました。外洋に行くには良いでしょう。でも、外洋どころか、日曜日
にさえ乗ってるのを見た事が無い。外洋の直進性が良い。良いことです。でも、舵が鈍いんです。
のぼりが悪い。真正面の風ではタックしてもタックしても「進まない。外洋艇は外洋に向くのです。
大きなキャビンは住むのに向くのです。レーサーはレースに向くのです。

ヨットはそのコンセプトを最大限に生かしきった時、最大のメリットを享受できます。ですから自分のコン
セプトを明確に持った方が良い。でも、多くの方々が同じコンセプト、いや、あれもこれもというコンセプト
ですから、どれもが活かしきれない。せっかくのヨットが泣いています。

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