第四十一話 求め過ぎる

アメリカなんか見ますと、結構な年配の方がディンギーに乗ってる事もある。でかいメガヨットもあれば、
小さな20フィートぐらいで、お父さんが子供とセーリングしているのもある。木造艇を愛する人が居れば
親子でニス塗りしていたり、子供から年寄りまで、シンプルから豪華まで、様々なヨットに、自分なりの
乗り方で楽しんでいる。

日本はどうかと言うと、まずキャビンの無いヨット、狭いヨット、ましてトイレの無いヨットなどなかなか広が
らない。それで、最低天井が立てる高さ、トイレが個室なんて条件になると、最低でも25フィートはないと
という事になる。そのぐらいになると500万とか600万はする。でも、有効利用はされていない。どうせ使わない
なら、初めからシンプルで、セーリング重視だったらもっと気軽に乗れるのにと思う。以前、紹介したコル
ゲート26なんかは、内装はシンプル、重心も低い、バラストは40%、でも、船外機である事とトイレがなか
った。それで売れなかった。内装は一切木部は無かった。これなど、室内を掃除するのに、ホース引き込
んで、ざっと洗い流して、ビルジポンプで排出すれば、掃除も簡単だなと思ったものです。でも、そういうヨット
は日本では売れない。

日本にはりっぱなヨットがたくさんある。殆がインボードで、個室トイレがある。木をたくさん使ったヨット、チーク
デッキ、どれもこれもりっぱなもんだ。しかし、どれもが汚いのはどうした事だろう。古くなったシート類、よれよれ
のセール、そんなのがたくさんある。時々、売りに出て、内部を見ると、たいていは私物がたくさんあって、それ
らが散乱している。シートの下はごみだらけ、たばこの灰皿には吸殻が残り、缶ビールの空き缶がシンクに置き
っぱなしというのもある。日本の車はあれほどみんなきれいなのに、ヨットは汚いのはこれいかに。

買う時は求め、あれもこれも、あらゆる状況に対応できるようなヨット、りっぱなヨットを望む。しかしながら、その
後大事にしないのは何故だろうか。アメリカの中古の詳細を見ると、何年に何を変えた、とかどんなメインテナンス
をしたかが詳細に書かれている事が少なくない。日本では、20年経っても、セールはそのまま、ロープ類もそのま
まの場合もある。一体、どちらの方がリッチなのだろう。汚くなったヨットをリニューアルするにはお金がかかる。
古くなったヨットにいまさらお金かけるのももったいないからと買いかえる。

どうせ使わないのなら、もっとシンプルなヨットにしたら、気軽に乗れるのに。買ったヨットを大切にすれば、トラブル
も少ないだろうし、何しろ、海に出て、トラブルは嫌なもんです。でも、メインテナンスはしない。業者に頼めば、高い
料金の請求書が来て、それなら自分でやればいいが、それもしない。ヨットのメインテナンスは自分でできる事が
たくさんあるのです。電気とエンジンはプロに頼むとしても、そのほかは自分でできる事が多い。でもしない。

30年経ったヨットを磨き上げ、ニス塗りを施し、セールを変えて、ロープ類を新しくする。これだけでどんなにきれいに
なるか、それを一辺にやろうとするなら大金がかかるが、年数とともに、徐々にやれば良い。自分でやれば良い。
そうやってきれいになっていく自分のヨットというのも良いもんです。

買う時に求め過ぎ、何でもつける。その分負担になる。だから、何もしない。ならば、最初から必要最低限で良いで
はないか。その分気楽になるし、気楽にセーリングに出れるし、価格も安くなる。でも、肝心な部分は求めない。
見える物は求め、見えない物は求めない。見えない所の方が大事なのに。残念!!!

もったいないという言葉は死後かもしれないが、今ヨットに乗っている世代はそういう言葉を聞いてきた世代ではな
いか。物を大切にしないから、ヨットは遊んでくれないのだ。どんなに豪華なヨットを持つより、シンプルでもきれいに
メインテナンスされ、どんどん使われているヨットの方が美しい。使い込んだ美しさはオーナーの愛情が感じられます
そういうオーナーはセーリングが好きな人です。だいたいそうです。きれいにしていないのに、キャビンには靴を脱いで
礼儀正しい。そういうヨットはアンバランスです。今すぐ、セールとロープ類を交換して、内外をクリーニングしましょう。
そして心機一点、セーリングに出かけましょう。それがヨットを楽しむ第一歩です。

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