第四十四話 こだわってみる

長い事ヨットに関わって、毎日、毎日、ヨットの事を考えています。すると、あんなのが良いとか
こんなのが良いとか、こだわりが出てきます。ですから、業者はどんなヨットが良いとか知って
います。でも、こだわりすぎると価格が高くなりすぎたりしますから、このバランスが非常に難し
い。できれば良いヨットを売って、喜んでもらいたいと思いますが、お客様の予算もありますので
どんどん追求していくと、結果的に買って頂けないという事になります。でも、予算がある範囲で
こだわるのは悪い事では無いと思いますね。どこにこだわるかですが。

うちで扱っているヨットは、みんなあるこだわりを持って選んでいます。シングルハンドにこだわっ
たヨット、クラシック、外洋、セーリング、どれもちょっと品質の良いヨットです。ですから、ちょっと
高いかもしれませんが、それぞれに良いヨットばかりだと思っています。全ての方がこれに同意
していただけるとは思っていませんが、何割かの方々が、ちょっと良いヨットで、自分のコンセプト
を打ち出していきたいという方には、きっと力になれると思っています。

第一のこだわりは、品質がちょっと良いという事です。年間建造艇数が100艇前後以下、これだ
と、造船所はプロダクション艇であっても、造船所がお客様の方を向いてる。仕様に関して、大き
な変更とはいかないものの、リストに無いものであっても、何とかしようという努力はします。建造
して売る事がビジネスですから大切ですが、同時に、それを達成していく為には、良いヨットを出し
たいと思うからです。逆に、ブランドイメージを崩すような要求は、断固として拒否する姿勢も持って
います。

第二に、シングルハンド又はダブルハンドで、どんなサイズでも楽にセーリングができる事です。
シングルと違って、ダブルなら、たいていの事はできますが、例えば、サイズが大きくなると、セール
を上げるだけでも大変です。それでメインファーラーにするのですが、ファーラーにしなくても、ウィンチ
を1個でも電動にすると、これはメインハリヤードだけでは無く、いろんな場面にも使えます。そして
メインシートはコクピットにある。一部の外洋艇はそうではありませんが、これは外洋というコンセプト
上、長い道中ではセーリングしますが、そうしょっちゅうはトリミングしていられない。

第三に、ヨットはセーリングが主体で、キャビンが従であるという事。それでもキャビンは充分にある。
良いヨットはキャビンさえも強度の一部ですからしっかり作ってます。

第四に、忘れてならないのが、お客様のコンセプトを良く聞くことでしょうね。ついついこれが良いなん
て押し付けないようにはしたいものです。ひとにはそれぞれの考え方がありますから。そこは謙虚に。

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