第八話 セーバー & アルデン
この二つの造船所はアメリカ東海岸北部に位置しています。アメリカの東海岸のヨットらしく トラディショナルなデザインで、どちらも外洋艇です。アルデン社セミカスタム及びカスタムに よる建造で、オーナーがデザイナーと相談しながら一緒に作り上げていく。そういうヨットです その歴史は古く、あのヒンクリーよりもさらに古い歴史があります。その品質も超一流で、こう いう建造の仕方ですから、年間建造艇数はわずか7艇と言います。 私も、この造船所を訪問致しました。近くにはニューヨークヨットクラブの施設があり、古い建物 でしたが、隅々まで磨き上げられており、海辺に面した庭には大砲がおかれていました。もち ろん空砲ですが、かつて、ケネディー大統領が若い時、この前をセーリングしかかると、仲間 が空砲をドカンと、うち鳴らしたそうです。ここにはケネディーとジャクリーヌが結婚した協会が あり、テニスのUSオープンの会場があり、周辺の屋敷、まさしく屋敷でした。門から玄関まで 長い距離があり、部屋も50ぐらいあるそうな、そういう屋敷が点々と海岸沿いに立ち並んでい ました。そこにはアメリカの古い歴史がありました。そういう所にある造船所ですから、推して 知るべし。 さて、アメリカの東海岸北部には昔から造船技術者がたくさんおり、従って、多くの造船所が 今でもあります。意外思われるかもしれませんが、父が船大工だった、そのまた父も船大工 という人が結構多いそうです。しかも、親子3代に渡って、アルデン社に勤めてきた。そういう 人も居るそうです。 こういう地にあって、建造コストを抑えプロダクション化を図ったのがセーバー社です。高い品質 を維持しながら、トラディショナルなデザインを少しモダンにしたような、そんなデザインの外洋 艇です。その造りも大量生産ではできない、職人の手を入れた外洋艇を誠実に建造しています スタートは28フィートから建造を開始したのですが、ご多分に漏れず、今では38フィートが最小 サイズとなっています。低い重心はもちろん、頑丈さ、バランスの良さ、時化に強い、外洋を基本 に建造されていますが、同時にセーリング性能も忘れない。このヨットはメインシートトラベラーが コクピットにはありません。私がいつも言っている事と矛盾するかもしれませんが、外洋を走る場 合には毎日24時間ヨットに居るわけですから、そうそうタックは無いし、いつもいつもセールの トリミングばかりはしていられない。そういう考え方です。居住性も必要ですし、直進性も必要、 それでも、できるだけ速い方が長い時間経つと走れる距離に差が出ますから、行動範囲が広が る。そういう考え方です。ここはプロダクション艇ですから、オーダーで作る事はできませんが、 それでもかなりオーナーの意向を聞こうという姿勢を持っています。
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