第十三話 ダウンウィンド
風上一杯に上る感覚を味わって、タックを覚えたら、マスターしたらじゃないですよ、次は ダウンウィンドです。風が後ろから来るセーリングです。ブームをぐっと外に張り出し、ジブ も外に出す。メインセールはブームがあるおかげで、後ろからの風でも外に張り出す事が できますが、ジブは、なかなかうまく行きません。ジブセールを大きく外に出したいにもか かわらず、ジブシートはサイドデッキから引いているので、内側から引く事になる。内側か ら引いて、セールを外に出す事はできない。それで通常はスピネーカーがある。だいたい ジブはダウンウィンドにはむかない。 でも、スピンを使うのは簡単じゃない。それで、ジェネカー、さらにファーリングジェネカー となるわけですが、ここでは、あくまでジブとメインだけでいきます。ジブを大きく張り出す 為にウィスカーポールを使います。でも、実際、これも面倒にも感じます。これをするぐらい ならファーリングジェネカーを使いたい。ジブがダウンウィンドに向かないなら、ジブの大き なヨットより、メインセールの大きなヨットの方が良いと思いますね。ですから、フラクショナ ルリグの方が良いと思います。メインセールはブームがあるので、シートを緩めれば、外 に大きく張り出せる。しかも、バングがあるので、ブームが上に上がるのを防いでくれます。 この理屈をジブにもと考えたのが、アレリオン28です。ジブにはジブブームをつけて、メイン セールと同じように外に大きく張り出す事ができる。通常のジブとメインだけのセーリングの 時、これがあるとかなり効率は良い。大きなジェノアでもダウンウィンドでは、からっきしだらし が無いのです。 ジャイブはメインセールが大きく張り出しているだけに、このままタックのように舵を切ると、と んでも無い事になります。一瞬のうちに、反対舷へブームが動く。ものすごいパワーで、頭に 当たると死ぬでしょう。ブームの付け根を壊すでしょう。それで、そうならないように、メインシ ートを引いて、ブームを内側に引き込み、そしてジャイブ、そしてシートをリリース。こうやって おだやかにジャイブします。最初の練習では風の弱い時にした方が良い。たまたま強風に なっていたなら、ジャイブせずに一旦風上に上って、シートを引き込み、タックして、またダウン に行くという事でも良い。とにかく、ジャイブはブームを内側に引き込んでリリースが肝要です。 上りと下りを覚えたら、その間はセールもその中間、簡単です。これで、自分の好きな方向へ 自由に行けます。ここまでで、マリーナから出て、セーリングして、帰ってくる事ができます。 これが最初の段階。後は、この一連のセーリングのひとつひとつをどう充実させていくかです。 それによって、セーリングはマンネリにもなるし、エキサイティングにもなります。すべては自分 次第です。バングの使い方、メインシートトラベラーの使い方、ジブシートのブロックの移動、 ハリヤード、シート、バックステーアジャスター、みんなこの先の為にある。これらを有効に活用 しようとすると、それなりの知識が必要ですし、それを実行に移して、そこから得た経験も必要 です。ですが、それらを活用させる事によって、これから先がさらにエキサイティングになります。 これからがもっと面白くなる。 ヨットは程よい風が吹いてくれると誰でも面白いと思うのですが、そうそういつも都合の良いように はいきません。それで、程よい風以外は面白く無いと思うかもしれない。でも、視点を変えて、自分 が得た知識を実行に移す。その結果、わずかでもスピードが増す。つまり、知識、行動、変化、そ れを感じ、経験となり、それが知識を押し上げ、再び行動へと循環する。この循環に伴う変化を感じ る部分に視点をおけば、それがだんだん面白くなっていくのが解ります。そして、この循環は雪だるま 式に大きくなっていきます。という事はそれだけ面白くなる。この循環にこそ、ヨットの最大の面白み があると思います。レースはそれを他と競争する事になり、そうなると順位が気になりますが、クルー ジングは循環そのものを楽しむ。クルージング艇もレーサーのようにセーリングに夢中になって良い のです。 |