第二十五話 クルージングでもセーリング

クルージングとセーリングは何が違うのでしょうか?クルージングはうろうろするという
意味合いがあります。それは必ずしもセーリングをさすのでは無い。あるアンケートで
はクルージング派の方々は70%ぐらいはエンジンを使うというのがあります。これは
アメリカでも同じような話を聞いた事がある。沿岸クルージングの場合、殆どがエンジン
を使うクルージングです。

一人で出ると、エンジンでうろうろしても面白くはありません。話相手も居ない。すると、
セーリングするしか無いのです。仕方なくセーリングするわけではありません。それで、
シングルはセーリングを主として、70%以上はセーリングをしようではありませんか、
その方が面白いです。

クルージング派の方々が、そこそこ操船ができるようになると、それ以上セーリングに
ついてはあまり考える事が無いようになられます。ちょっと工夫したからと言って、艇速
が2倍になったりするわけではありませんが、まずは、基本的な操作ができるようにな
るのが先決ですが、そこそこ来たら、今度はもっとセーリングの事を考えてみてはいかが
でしょうか。もっとスムースに、少しでも速く、そしてかっこよく。

セーリングの事を考えるのは、レースの専売特許ではありません。クルージング派の方々
もセーリングして良いのです。よりスムースな走りは速いだけでは無く、乗って楽でもあり
ます。速いには、よりきれいなセールカーブという事もあるでしょうが、より抵抗を少なくする
という事もあります。その両方を追っていくと、滑らかで、より速く、しかもより疲れない、安全
なセーリングにも繋がる。

シングルハンドのデイセーリングではセーリングを中心に据えるのが最も面白い運営方法
だと思います。それがどのレベルであるか、というより、常に、今よりもっと面白くと思えば、
もっと上達しようと思えば、どんどん面白くなります。

先日、あるオーナーが、クルージングの方で重いヨットですが、風向風速とスピード計をつけ
ようとある業者に頼んだそうです。でも、クルージングにはそんな物は必要ないと言われたそう
です。私の意見はこれとは反対で、重いヨットだろうが、オーナーがこういう計器を設置される
のは大賛成です。何ノットの風がどっちから吹いて、その時の艇速が何ノットで、そういう乗り方
をしていますと、シートを引いたり、出したりする時、それで艇速が上がったり、落ちたりがすぐ
に解ります。それが良いのです。これが自然に記憶されます。いちいち記録しなくても、誰でも
そんな乗り方をしていれば自然に記憶に蓄積されます。そして、自分のヨットの走りが解り、
自分の走らせ方も解る。ある時、どうしてもスピードが通常より出ないとか、そういう事がわかる
そうすると、船底の汚れであったり、潮の流れであったり、いろんな事が解る。解れば、また
ひとつ面白くなる。前にも言いましたが、知的遊びとしてのヨットが、断然大人を魅了して行きま
す。ただ、走るのでは無く、知的に走る。この知的ゲームと実際の感じる感覚、これが相乗効果
となって、ますます面白くなる。これこそが、ヨットの醍醐味ではないかと思うのです。

それに比べたら、ビール飲んで、良い気分になって、あるいは、爽やかな風を受けてというのは
セーリングの合間にくつろぐ程度で充分ではないかと思うのです。それも、セーリングがあるから
余計、感じるものも大きくなると思います。自分のレベルがどこにあろうが、そんな事は問題では
ありません。ヨットはあなた次第で単なる移動手段にもなるし、別荘にもなる。或いは、知的ゲーム
を満喫もできるし、セーリングという何ともいえない感覚をも与えてくれます。どれを楽しむかは勝手
ですが、セーリングという項目だけが、ヨット以外では味わえない事です。それでは、レース派で
あろうと、クルージング派であろうと、セーリングを楽しむのが最もヨット独特の特性を味わう事では
ないかと思います。

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