第四十話 ヨットは手段

どんな経験をしたいか、ヨットはその為の手段に過ぎません。最終目的はどんな経験を
したいかですが、それを実行するにあたり、どんなヨットがより、その経験を引き出しやすい
のかと言う事になるかもしれません。ロングクルージングに向くヨット、レースに向くヨット、
そういう事になってくる。レーサーでロングに行っても一向に構わない。実際、フランスから
IOR艇で日本に来たカップルが居ました。でも、それに向くヨットというのはあるものです。
これもどんな経験をしたいかにかかっているでしょう。冒険がしたいのか、挑戦なのか、
あるいは、風光明媚なところをぐるぐる回ってみたいのか。

どんなヨットでもパーフェクトはあり得ない、どんなヨットも、絶対これ以外には使えないという
のも無い。そこで、妥協をする前に、自分がどんな経験を最もしてみたいのか、それを決める
事が大切です。でも、大抵はヨット始める方はセーリングがしたいと思っているのでは無いで
しょうか。それがいつの間にか、セーリング以外に目が向いてくる。それはそれで良いのです
が、セーリング自体を忘れてしまうのが問題です。

決して、何かをしなければならない事は無い。自由で良いと思います。でも、セーリングでは
無いとしたら、そのヨットからどんな経験をしたいかを決心すべきでしょう。しなければならない
事は何も無い。ただ、その決心によってどんな経験をするか、その決心に応じた経験をする
という事です。

ヨットが美しいなら、その美しさは人をヨットに誘う力がある。その力で経験が導き出される事
になります。ヨットが速いのなら、その速さは別の経験を生み出す。ヨットが頑丈なら、その
頑丈さが、同等の経験を生み出す。ただ、それだけです。最後は決心ですが、それをより
可能にするのが、ヨットです。そのヨットを送り出すのが、我々業者の仕事です。どんなヨット
か、どんな経験を生み出す可能性があるのか、それがヨットのコンセプト、そのコンセプトは
デザイナーが握り、その品質の高さは造船所が握る。

当社では、セーリング第一と考えています。いかなるご馳走よりも、いかなるキャビンの広さ
よりも、セーリングを楽しむという事が第一と考えます。その中でも、シングルハンドは最も
誰もが、最高に楽しめる方法ではないかと思っています。

美しい女性を見たら、誰でも惹かれます。それが普通でしょう。ヨットも同じ、美しいヨットには
惹かれます。ヨットは女性なのです。ヨットは美しいのが良い。でも、美しいだけではいけません
ちょっと浮気なら、美しいだけでも良いですが、長い付き合いなら、その性格も必要でしょう。
安全性や性能や品質、そういう物も見極めて、ヨットを選ぶ。

良い経験をする為に、相応しいヨットを選ぶ。それを提供するのが我々業者です。

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