第四十五話 シングルハンドの可能性

シングルハンドで乗れるサイズという話が時々持ち上がります。そして、だいたい
声をそろえたように30フィート前後ぐらいまでという話になります。何故か、という
疑問が出てきます。

もちろん、人によってサイズの評価は異なるのですが、シングルで乗れるヨットの
サイズがどの程度まで可能であるのか、少し検討したいと思います。

最も問題になるのが、マリーナからのエンジンによる出し入れ、本当はこれが、
殆どの原因ではないかと思います。つまり、狭いマリーナなどでの強風時の出し入
れは、へたすると隣のヨットにぶつけはしないか、或いは、そうでなくても、もたもた
していると格好悪いし、何とか出しても、今度は帰ってきた時にどうなるやら。
場所によっては、ヨットの後ろには広いスペースがあるような時は、例えば、漁港
とかに係留されているようなヨットは後ろが広いので、結構大きなヨットでも、楽に
出してある。ところが、狭いマリーナで、後ろですぐに方向転換しなければならない
ような所はなかなか難しいには事実です。練習と工夫が必要ですが、うまい方は
狭い場所でも、私が知っている方ですが、43フィートを平気で出し入れされる。
最大は53フィートをシングルで出し入れされる方を知っています。うまくなれば、
不可能では無いという事でしょうが、確かに、なかなか大変ですね。特に、最近の
フリーボードが高いヨットは風圧面積が大きいので、余計難しくなります。

そういう大きなヨットをシングルで操作される方の話を聞きますと、まずは風の方向
を確認して、それをうまく利用する、バウが風下に流れるので、それを利用する。
それに、大きなヨットは小さなヨットようにすぐには流れないので、対応できるとも
言われます。それでも、風圧面積は小さい、低いフリーボードの方が楽でしょう。
エンジンの使い方も、低い回転でとろとろというより、瞬間的にエンジン回転をぐわっ
と上げたりして、大きく使ってあります。とろとろ行ってると余計に流される。

バックで出たり、帰ってきた時のロープの取り方、そういう工夫もあります。ミッド
シップにクリートがあれば、そこからとにかく1本取る、或いは、前後のクリートから
1本づつ取って、ロープを持っておりて、前後をとにかく桟橋にかかてしまう。デッキ
から桟橋のロープを取れるようにしておく。いろんな工夫がありそうです。バウスラ
スターという手もあります。

これらは練習と工夫しかありません。それとできるだけ風圧面積の少ないのが良い
でしょう。

さて、これが何とかなるとしたら、後は何がシングルハンドを制限するでしょうか?
メインセールを上げる。ジェノアシートを引く、タッキング、ジャイブ、そういう作業は
ウィンチを使う。それがしんどいなら、電動とか油圧という事も、今では珍しくもあり
ません。こういう電動を駆使するなら、大きなヨットのシングルハンドも可能です。
事実、ディスタンシア60というドイツのヨット、シングルで60フィートを可能にしていま
す。お金はかかりますが、今の時代、いろんあ機械があります。何でも機械に頼る
というのもいけませんが、それで、もし、シングルハンドが可能になる、というならそれ
はそれで前進でしょう。

シングルハンドを制限する最大の原因は、心理的な面が最も大きいと思います。これ
大丈夫かな、と不安に思った時、その時に隣のヨットにぶつけでもしたら、もはやシン
グルをあきらめてしまう。これぐらい何とかなると思った時、たとえぶつけたとしても、
まあ、その為の保険だと、割り切ってしまう時、シングルは可能になります。可能にす
るにはどうしたら良いかを考えはじめる。工夫が始まります。これが可能にしてしまう。
何フィートが限度とか言う話は聞かない方が良い。自分で、どう感じるかを感じ取る事
たいした事無いと思えるか、これは無理を感じているか、それを感じとる事が大切か
と思います。遊びですから、無理はいけません。一サイズでも二サイズでも落として、
気楽に出し入れできるというのもOKです。いずれにしろ、最後は気楽に出し入れできる
ようにならなければなりません。そうでないと、ヨットが面白い域にまで到達できないから
です。不安の中で大きなサイズにするぐらいなら、気楽な小型の方が絶対面白い。
でも、大きなヨットを気楽に出せるなら、おおいにOKです。

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