第五十五話 セーバー&コメット

アメリカのセーバー、イタリアのコメット、どちらも個人オーナー向けに良いヨットを
建造しています。でも、同じヨットであるのに、まあデザインはこんなに違うんです。


セーバー426                  コメット ジェネシー43

好みの問題でしょうが、アメリカ人にはイタリア人のデザインはできないし、その逆
もしかり、セーバーのヨットは本格外洋艇の重厚感あふれる造りで、一方、コメット
は同じ外洋艇でも、もっとスポーティーです。

お国柄と言いますか、何となく解りますね。セーバー社は1970年、コメットのコマ
ー社は1961年の創業、セーバー社はこれまで約2,500艇を建造、コマー社は
約5,000艇を建造してきました。大量生産艇と比べますと、非常に少ないのです
が、それぞれに昔ながらの職人による手造りの部分と、最新のテクニックの両方を
使いこなす造船所です。どちらも堅実に進んでいる、そういう造船所です。

価格を見ますと、セーバー426で標準で約4,000万、ジェネシー43は約3,000
万、どちらも造船所渡しです。この1,000万の違いは何でしょうか?その時々の
為替レートの問題も大きいのですが、私が見るところ、セーバー社の方がより手造
り的部分は多いです。現在の建造艇数を見ても、倍の差があり、セーバー70に対し、
コメット150艇/年間、内装なんか見ても、セーバー社はより重厚で手がかかって
るなという感じがします。もちろん、コマーの内装も非常にきれいです。

どちらもコクピットは大きすぎず、スターンはやや絞り、低いフリーボード、低い重心、
どちらも外洋一辺倒では無く、日常のセーリングにおいてもショートハンドでの扱い
やすさがありますが、ジェネシーの方がよりセーリングをスポーティに捉えていると
言えるでしょう。

ヨットの選択には、沿岸沿いか外洋か、或いは外洋の造りがほしいのか、同じ海域で
もどんな風に帆走したいのか、旅がメインか、帆走自体がメインか、シングルかダブル
か、そして見た目のデザインと予算、もちろん、グレードの高いヨット、価格のちょっと
高いヨットはたいていは外洋艇ですから、あとは価格と見た目の好みで決めても間違う
事は無いと思いますね。でも、外洋艇とは言いながら、そうは思えないのもある。

それからデザイン面で、センターコクピットやハードトップを備えたモーターセーラーなど
はどうしても構造上重心が高くなります。それで、ある程度の大きなサイズでないと、
重心が高くなりすぎて乗るには苦労する(時化た時)と思います。

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