第六十五話 フォークボート社

舵誌11月号に北欧のボート事情が掲載されました。ついでながら、当社扱いの
フォークボート社について、すこし。このヨットは欧米では非常に盛んなんですが
何故か日本では今一。北欧の自分流のスタイルでヨット遊びをしている人達に
は実にかっこうのヨットなのです。あふれる個性、時化に強い、何より気軽に乗り
こなす事ができます。ヨットに全てを望むと、セーリングから居住性から、快適性、
等々、何でも望むと、大きなヨットにならざるを得ません。でも、ちょっときてすぐに
セーリングを楽しむ、自由自在に、サイクリングの如く、そういうスタイルなら、こう
いうヨットは最適です。

 

物の見方にもよりますが、シンプルで何も無い。あるのはセーリング装備一式と
シンプルなキャビンだけ。無いからいけないと考える事もできますが、無いから
何も気にする事は無い。簡単です。メインテナンスも少しで済む。その分、セー
リングを楽しむ事ができる。時折、チーク部にたっぷりとニスでも施してやれば、
小さな船体ながら、非常にクラシックで美しい存在感が光ります。

最近船外機は嫌だと言う方も多いのですが、逆に考えれば船外機だから良い
部分も多い。ぺらにロープを巻いた?簡単に取れます。潜る必要ありません
メインテナンスもしやすい。船内に海水が漏れる事も無い。そう考えると多くを
求めなければ、シンプルにヨット遊びをしようと思えば、これ程気楽なヨットは
ありません。

日本でも、こういう考え方の方がおられます。実に気持ちに気楽さを持ち、余裕
のある方でしょう。標準仕様に、ちょっとオプションを加えた程度です。キャビンの
照明もつけない。夜間航行のライトも無し、これらは先々必要になったらつける
という事です。この余裕、ヨットは新艇が完成で終わりで無く、始まりなのです。
ここから始まって、自分のスタイルで好きなように仕様を決め、作り上げていく、
このスタイルが良い。きっと、数年後はもっともっときれいになっているでしょうね。
このフォークボートはそういうヨットです。ベースが与えられ、後はオーナー次第、
自分の好きなように作り上げていくのが良い。造船所で何でもかんでも設置する
事は可能です。メインファーラーまで可能なのです。でも、造船所はできるだけ
標準仕様からスタートする事を推奨します。そして、先々で必要な物があれば
いつでも、全ての部品、あらゆる物が、何十年でもキープされています。今ある
オプションが50年前のヨットにも設置できるようになっています。確かにヨットの
建造方法は変わりました。ウッドからFRPへ、ひとつひとつの部品は良くなってい
ます。でも、基本は変わらないのです。この変わらない事を良いか悪いかという
ふたつの見方でするのは間違いです。これがフォークボートのスタイルであり、
そしてこれが世界中で支持されているという事実だけで充分です。60年の時を
経て、このヨットは完成されていると言われます。後はオーナーの判断にお任せ、
もっともっと気楽に遊んでみたらどうでしょうか。

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