第八十九話 ジブファーリング

このシステムはもう殆どのクルージング艇に採用されて久しく、どこのメーカーの物でも
問題なく使えると思います。もう完成の域にあると思います。ただ、選択時にちょっと注意
が必要ではないかと思う事があります。それはメーカーを選ぶというより、サイズを選ぶ
と言った方が良いでしょう。

何でも安くできればそれに越した事は無い。人情ですね。良く解ります。メーカーが出して
いるサイズに例えば、23フィート〜28フィート用とか、26フィート〜30フィート用とか説明
がありますが、自分のヨットが28フィートだったら、サイズの小さい方を選び勝ちです。
その方が安くつく。これも使えない事はありませんが、例えば、巻く時にかなり重かったり
します。もちろんサイズだけでは無く、フォアステーがだらりとたるんでいればファラーの
ドラムに巻かれたロープを引いても力が伝わりにくくなるので、重くなりますが、サイズ的
に小さいと重くなる事がある。予算に余裕があれば、できれば長く使うものでもありますの
で、サイズには少し余裕を持った方が、後々楽ではないかと思います。

前にも書きましたが、ファーラーの場合、ジブハリヤードがフォアステーに巻きつかないよ
うに注意しなければなりません。巻きついて、フォアステーのワイヤーのよじれがほどけ、
そして又巻き、これを繰り返して、しまいには切れるという事が稀にですがあります。
その為にはハリヤードにテンションをかけておくこと、緩むと巻きやすいです。それと、
セールのラフが短めで、ハリヤードのマスト出口から距離がある場合は、ハリヤードが
フォアステーに平行になってきて、巻きやすい。それで、こういう場合はマストにアイを設置
して、ハリヤードの引く角度をマスト側に角度をつけてテンションをはる。これで巻きつきは
防げます。

メインテナンスはドラムにベアリングがありますが、永い間使わないと塩かんで硬くなって
いる場合がありますので、とにかく使う事と、潤滑剤のスプレー、ベアリングがプラスチック
だと俗に言うCRCよりシリコンスプレーが良いようです。CRCは金属には良いですが、プラ
スチックを溶かす事があるそうです。それとフォアステーがたるんでいないか、ジブハリも
たまにはセールおろして点検しないと、マスト入り口のシーブ部分で摩れて切れかかって
いるのを時々見ます。ハリヤードをちょっと長めにとっておくと、こういう場合、切れかかって
居る部分は先端ですから、カットして、シャックルを繋ぎなおせばOKです。ハリヤードがぎり
ぎりですと、1本全部交換になってしまいます。

セールを巻いた時はシートとドラムのロープをピンと張って、両方にテンションをかけておく。
シートがたるんだままとか、良く見かけますが、強風がセールの隙間に入って、セールを
開く事があります。こうなると手がつけられません。セールが破れるか、ファーラーのアルミ
ホィールが曲がるか、台風時には最も多く見かける事故です。ついでながら、台風時には
セールを下ろしてしまうのが最も良いのですが、それができないなら、スピンハリヤードを
セールの回転方向とは逆に方向に、フォアステーに巻かれたセールの上からぐるぐる巻いて
テンションをかけておくと、これまた上記事故を防ぐ事にもなります。

シートですが、これはファーラーに限らず、結び目がタック時にステイにひっかかって、スムー
スにタックできなかった経験があると思います。それではこの結び目を小さくしようという事
になりますが、セールを取り替えたりするレーサーなどはそうはいかないと思いますが、
ファーラーなら1枚ですから、左右2本のシートがありますが、これを交換する時には、長い
1本にして、その真ん中をセールのクリューに結ぶ。輪をクリューに通して、その輪に2本の
エンドを通して引けば、小さな結び目で、ひっかかりも少なくなると思います。

ジブシートの引く方向、セールのラフの長さの中間カラクリューに向かって真っ直ぐ線を引いた
延長上にジブのリードブロックを設置して、シートを引く。これで、セールのフットとリーチの両方
に均等にテンションがかかる。これを中心に風によって、ブロックを前後させるという、意識的
な操作をしてはいかがでしょうか。ブロックを前にやれば、リーチにテンションがかかって、ドラ
フトも深くなる。後ろにやれば、フットにテンションがかかって、リーチは開く。ツィストですね。
セール上部から風が逃げる。風は下と上では風速が異なります。上の方が速い。それで、セール
を上から下まで同じ角度というのは可笑しいのです。ヨットが進むと風向は前側に回る。しかし
風が速いと、その逆で、風向は後ろに回る。という事はセール上部は少し開いた方が良いという
事になる。

フォアステーのサギングはバックステーアジャスターで、でもこれが無いヨットも多いです。できれば
クルージング艇であっても、これはあった方が良いとおもいます。クルージングという事で、セーリン
グに関する装備は最低限というか、あまり気にされない方も多いのですが、これら装備は決して
レースだけの為にあるわけでは無く、あれば、より良いスムースな帆走を楽しめるのです。何でも
かんでもとは言いませんが、やはりセーリングの事を意識してもっと快適なセーリングをしてほしい
と願っています。

ついでながら、ジブブームというのがあります。セルフタッキングですが、これは非常に便利で、シン
グルにはもってこいではないかと思いますね。でも、メインセールが小さいタイプで、これにさらに
ジェノアを小さくしてセルフタッキングにすると物足りないかもしれません。あるオーナー、夏場は
ジェノア、冬になると強風が多くなるのでセルフタッキング、と使い分けておられた。良いと思います。

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