第七十一話 クルー

クルーが居ないと嘆くことなかれ。クルーが居れば良いというもんでもない。一緒に乗る
と誰が船長で、責任は彼が取るから、全て彼の命令に従う。何てこと考えて乗るわけじゃ
ない。和気あいあいです。それで、オーナーがしたいようにできるかと言うと、そうはいか
ない。オーナーもだいたい気を使われる。もっと走りたいのに、クルーがそろそろ帰りまし
ょうかなんて言い出すと、嫌とは言えない。ああせい、こうせいというのも無い。

だいたいセール上げて走り出すと、みんなで世間話、たまに誰かがシートをちょっと動かし
て、再び世間話。たまに舵を交代して、また世間話。こういうケースが多い。セーリングを
面白がるより、世間話。風が無い時はそれでも良い。でも、せっかく良い風吹いている時
は本気で走ってみましょうよ。その為にセーリングしているんですから。

ですから、クルーは誰でも良いというわけではありません。オーナーの考え方に沿うクルー
でなければオーナーは面白く無いはずです。ゲストを乗せて、その日だけのクルージング
ならそれでも良いかもしれませんが、毎回来るクルーなら、オーナーの意向が優先されな
ければならないし、そのオーナーの意向をクルーも同じように楽しむ人でなければいけませ
ん。皆が楽しいと思わなければいけません。オーナーとクルー一人ぐらいならまだ良いのです
が人数が増えるとそうはいきません。

セールを上げて、走り出すと、世間話が始まって、そのうちビールが出てきて、漫然と走って
そして帰ってくる。全部とは言いませんが、こういうのも多いのではないかと思います。それで
満足でしょうか?みんながそれぞれ同じ方向を目指して、協力してグッドフィーリングを得よう
と思う時、チームワークの面白さが出てくる。これはシングルでは確かに味わえない事です。
みんなでうまくなろうと思うチームは楽しいに違いない。でも、そうでは無いチームが多いと
思うんです。世間話して帰ってくるのも多いように思えます。ですから、クルー選びは慎重に、
オーナーの我侭を通してください。でも、同時にクルーも楽しい、皆が楽しいセーリングで
なければなりません。

そういう事が難しければ、シングルが良い。自分で何でもできます。ゲストが来た時は、その
ように世間話でも良いし、セーリングをちょっと教えて、何かさせるのも良い。どうにでもなる
万能のセーリングです。ただ、チームワークの面白さは味わえませんが。

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