第三話 ちょっと良いヨット

世界にはたくさんのヨットがあり、日本にはまだ一艇も入ってないヨットもあります。
例えば、我々業者はヨットを見つけ出して、デザインとか価格とかを見ながら、これ
が日本で売れるかと考えます。誰でも品質は高い方が良い。でも、値段が高すぎる
のは売りにくい。最も安いヨットと最も高いヨット、2,3倍の価格差があります。全て
の方々が安いヨットを求めているわけではありませんが、高すぎるのも困る。それに
見た目の美しさ、モダンかクラシックか。それに加えて重要な事があります。モデル
数です。小さなサイズから大きなサイズまでカバーしていると、対応が楽になります。
海外と取引をするには言葉の問題もありますが、各社各様の対応があり、それを
一社でできるなら楽です。

ところが、そううまく行かないもので、多数のモデルを25フィートあたりから50フィート
ぐらいまでカバーしていて、どのモデルもなかなか良いデザインで、品質も良いポイント
を押さえた造りで、価格もそこそこなんていうのはなかなかありません。少ないところ
ではモデルがひとつだけというのもあるぐらいです。そこでどうするかと言いますと、この
際ですから、面倒でも数多くの造船所と付き合うという事にしました。それぞれの造船所
にはそれぞれのやり方があります。でも、モデル数は少なくても、たいていこういう造船所
はコンセプトを明確にして、それ一本で会社が成り立っているわけですから、それなりの
理由があります。それを市場が認めているわけです。多くの造船所、しかも国もバラバラ
というのは結構大変なのですが、でも、そうやっていろんな造船所から、ひとつひとつピッ
クアップしながら、いろんなモデルを集めています。基本的にはふたつの基準を持ってい
ます。ひとつは品質として、重要なポイントはきちんと押さえた建造をしている事です。
豪華とか高級という事では無く、どのヨットでもきちんと造っているかという事です。そう
いう姿勢が造船所にあるかどうかです。これはコンセプトにも反映してきます。それと、もう
ひとつはコミュニケーションです。これも大切です。かつて、ある造船所ですが、返事を
もらうのに1ヶ月、こちらが忘れた頃に来たというのがあります。こんなのは論外です。
日本のマーケットを軽んじいるのかもしれませんが、もしそうなら、どんなに良いヨットで
あっても、トラブルの元ですので、こういう所とは付き合わないようにしています。それに
何社とも付き合うのですから、こんなのが混じってたら、こっちは大変な目にあいます。
日本のマーケットは欧米に比べると小さいので、無視されがちですが、積極的な造船所
も多いです。しかも、日本市場に理解がある。

ノルディックフォークの造船所はデンマークですが、モデルは25フィートのみ。ここのミス
ターフォークボートと呼ばれる人は、実に海外のマーケットの違いに理解を示してくれます。
彼らの設定した標準仕様、これが最もセーリングを気軽に楽しむには最高のセッティング
だと言いますが、同時に、それが理解できるまで、質問に丁寧に何度も答えてくれますし、
希望があれば、できる事は何でもしよう、このヨットのコンセプトを壊さない限り、対応して
くれます。レスポンスも非常に良い。でも、どこの国も最終的には標準仕様に近いセッティ
ングが増えていくと自信を持っている。

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