第五十一話 三角形のセール

セールは縦のラフ、横のフット、そして斜めにリーチ、この三つの辺で三角形を造っていますが、この三角形を飛行機の翼のように、カーブを作って、パンと張り、風を流す事で揚力を得る事で走る
この三角形の面のカーブを浅くしたり、深くしたり、緩やかなカーブの頂点(ドラフト)位置を調整したり、そして、この三角形をひねったりしながら、その時の状況に合わせてこの形を整える。

どんな操作をすれば、それができるかを学ぶ必要があります。ハリヤードのテンションを加えるとセールのラフが上に引かれますので、ラフにテンションがかかる。これはドラフト位置の前後に影響を与え、ラフテンションが強まるとドラフトは前側に移動し、緩めると後退する。ラフのテンションを操作する方法はハリヤードを引く。当然、ラフは上に引かれテンションが増す。これは同時にリーチにもテンションが加わるので、リーチが閉じる事にもなる。カニンガムはラフを下側から引いて
テンションを加える装備ですが、これはリーチには影響を与えない。と言っても、これを装備しているヨットはあまり見た事がありません。ついでながら、ノルディックフォークはハリヤードをゆるく張って、後はカニンガムでテンションを加えるシステムです。25フィートというサイズですから、ウィンチを使わずセールを上げる事ができます。それで、後はコクピットからブロックでテークルを組んだ装備でテンションを加える。合理的なやり方だと思います。

フットのテンションはアウトホールを使う。ドラフトを深く、微風時にゆるく張りたい時や浅くしたい時に使う。ドラフトの深さはマストのベンドによっても変化しますので、バックステーアジャスターを締めてドラフトを浅く、緩めて深くという操作をする。

リーチはブームエンドが下がればリーチのテンションは上がり、ブームが上にあがれば、リーチは緩みテンションが下がる。ブームを上下させるには、メインシートとブームバング。メインシートトラックの及ぶ範囲ではメインシートを使い、ブームを横に張り出す時はバングを使う。バングを締めれば当然ブームは下がるので、リーチは閉じてくる。メインシートは同じ働きをするが、シートを緩めるとブームは真上には上がらず、風下側の斜め上に上がるので、角度にも影響を与える。そこでメインシートトラックで風上側に引き上げて、ブームが実質的に真上に上がる位置にする。
リーチを緩めると、真後ろから見ると、リーチは弧を描きます。リーチにテンションを加えていくと、カーブはよりストレートに近くなっていく。高い位置程風が強くなるので、カーブをつけて、上部のリーチを少し開き、つまりブームを少し上げて、上り角度をつける為にトラックで風上に引き上げる。

理屈を言うとだいたいこんなもんで、ジブセールも理屈は同じ。でもやり方が少し違う。これはじっくり観察すると、同じ事をするにはどうしたら良いか解ってくると思います。

難しいのはこの先で、どんな状況で、どの程度やれば良いのか、この組み合わせが大変難しい。実践で学ぶしか無い。各部の働きを覚え、観察して、後は学びながら遊び、遊びながら学ぶ。これで10年も20年も遊べます。真剣になれば、決して飽きないし、飽きないという事は終わりが無いという事にもなって、完璧にはならないという意味になります。つまり、より良いセーリングができればOKで、それを楽しみ、またさらにより良いを目指していく事になります。

それで、こんなに複雑な事を考えなければ走れないかと言うと、簡単に走る事もできる。多少カーブが悪かろうが、走らないわけじゃない。効率が多少宜しく無いだけです。誰が発明したか知りませんが、初心者でも走らせる事ができて、同時にプロでも完璧にはならない。すごい遊びもんだと感心してしまいます。

ところが、ここに罠が同時に仕掛けられている。初心者でも簡単に走らせる事ができるのは良いのですが、それ以上は求めないと、そこで止まってしまう。それでも走らせる事ができる。求めた人にだけ、より良いセーリングが際限無くあるという事です。この罠にはまると、ヨットはそれ以上の物では無くなります。10年、20年面白がるには、求めるのが一番です。理屈を学んで、実体験から試行錯誤を繰り返して、その調整を学んでいくのが、面白いヨットの遊び方ではないかと思います。同じヨットに繰り返し乗る事で、それがだんだん解ってくる。前の時はこうだったが、積み重なって、その積み重なった経験がさらに次のステップへ押し上げてくれます。

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