第五十七話 合理的な考え
二人居れば、たいがいでかいヨットでも操船できる。ただ、でかいヨットは何でも大きいので、電力や油圧を頼りにしないと、セール1枚上げるのにしんどくて、そのしんどさを思うと億劫になってしまう。若いクルーがたくさん居た昔の時代から、状況はどんどん変わってきています。でも、逆に考えますと、電動や油圧などの力を借りれば、大きなヨットでもダブルハンド程度でも容易に、しかも楽に動かせるようになる。それもひとつのやり方でしょう。ただ、費用は相当かかります。 そこまではは無いミドルサイズなら、ダブルで乗れるし、人によってはシングルでも乗れる。このミドルサイズというのが難しい判断になりますが、自分が若い時なら、この程度、ウィンチもバリバリ回していた。ところが、体力を失ってくると、そうは行かない悲しさも沸いてくる。でも、誰でも年を取るし、誰でも若い時と同じには行かない。ならば、そういうミドルサイズに大型と同じように電動や油圧を使うという手もある。割り切ってそうすれば、それも楽に出る事ができる。ただ、高いヨットにつく事は間違いない。 そして小型なら、楽々操作できる。電動なんかに頼る必要も無いし、シングルでも行ける。 何が変わってきたか考えますと、欧米もすそうですし、日本も同じだと思いますが、オーナーの年齢層が上がってきた。それと遊びが多様化し、昔のように若いクルーが集まりにくくなってきた。先日のニュースによると、アメリカでテレビゲームの展示会が始まったそうだ。マイクロソフトは1、000万台のゲーム機の販売をもくろんでいる。ソニーだって、任天堂だって、シェアーを獲得しようと必死になって面白いゲームを企画していく。そこに多くの若者が集まっていく。手軽に、冒険やスリルが味わえるゲーム。自分は完璧安全の中に居て、冒険をバーチャルに味わえる。一方、ヨットは完全な安全は無い。やればしんどいし、危険もある。ならば、テレビでヨットゲームなどしていた方が楽なのです。そういう時代です。いつまで続くかは知りませんが、流れの一過程ですから、それはそれで仕方ない。 そういう時代にヨットに乗る。バーチャルでは無く、本物の味わいを求める人達ができる事は、いかに実行するかでしょう。それが今日のアメリカでの市場、新しいシングルハンド市場の台頭ではないかと思います。クルーなしで、ヨットを動かすには、電動を使うか、サイズを小さくするか、そういう結論ではないかと思います。それでアレリオンが人気が高かった。美しい姿は彼らを魅了するに充分だった。あのでかい体のアメリカ人が、あの小さなキャビンのヨットを買う。つまり、彼らは、ヨットに寝泊りするという習慣をやめて、キャビンはちょっとくつろげれば良いという考え、その代わり、シングルを容易に、高い帆走性能で楽しみ、楽な操作で楽しめる方向に向かった。 時が経つと、もっと多くのそういう人達、クルーが居ない、年齢を重ねた人達が増えていく。そうすれば、かつて50や60フィートのオーナーだった人達は、シングルといえど、もう少しサイズが大きい方が良い、と言ったかどうかは知りませんが、まあ、当たらずとも遠からずでしょう。それで、35フィートができ、40フィートができた。極端になりますが、60フィートのシングルハンド用ヨットというのもドイツで開発されました。 もちろん、従来のキャビン重視型ヨットも数多くある。しかし、少し変化してきています。皆がみんなヨットに寝泊りしたいわけじゃない。忙しい人は、デイセーリングでもいいから、楽しみたいと思うようになってきた。そういう時代が来ています。 日本だって同じ、クルー不足、40代なんか若手と言われるヨット界です。35,6フィートのヨットのセールを昔なら、難なく上げてきた。でも、今はちょっとしんどい。そういう年齢になってきた。それを嘆いても仕方が無い。そういう現実を受け入れる。そして、それでも、何とかしてヨットを現役で自分で操作して、楽しもうじゃないか。そう考える方が得です。それじゃ、電動使うか、サイズを小さくするか、そういう事で解決していく。 あるオーナーですが、買い換える度にサイズダウンされてきた。一般とは逆です。でも、出航回数は最も多い。確か、今70ウン才だと思います。いくつになっても、現役で、いかに遊ぶか、クルー不足ならショートハンドで、もっと少ないなら、ダブルで、もっとならシングルで、今できる事を今やる。それが良いと思います。 小さいヨットより、でかいヨットの方が優れているか? どちらが速いかならでかい方、遠くに行くのにどっちが楽かならでかい方という事になるかもしれない。でも、どっちが面白いかというなら、そういう答えにはならないのではないでしょうか。ちょっと小さいヨットを軽視しすぎるような感があります。大きくても、小さくても、今できる面白いのはどれかと考えてみても良いのでは、と思います。 どちらも良いんだと思います。 40フィートに乗っている方が急に25フィートには乗れない。でも、海外ではそういう人達が増えている。何故なら、その方が今の自分の状況には合っていて、その方が楽しめると解っている。実に合理的な考え方です。遊び物は遊んだ者勝ちです。乗れない40フィートに固執していると、遊べない。或いは、電動ウィンチなどを設置して、いずれにしろ、できるようにしよう。そういう合理性は良いと思いますね。 もはやキャビンが広いなんてこだわる事は無い。あの図体のでかいアリカ人が、もはやキャビンに寝泊りはしない、デイセーリングやウィークエンドでのちょっとしたくつろぎ空間で良いと言ってます。そうなると、その分船体重心を低くして、セーリングがより快適の方が良いと言ってる。あのキャビンは寝泊りする為にでかくした。寝泊りしないから、もうあんなである必要は無いと言ってる。 もちろんみんなではありませんが、そういう方々が増えてる。それにこだわらないから、ヨットのプロポーションは美しくなり、重心は低く、風圧面積も減少し、セーリングには都合の良い事ばかり。 |