第六十三話 セーリングクオリティー
ヨットがなんだかんだ言ったとしても、結局はセーリングのクオリティーがどうだ、という事につきると思います。いろんな計算式による数値がどうこうなどより、実際セーリングしてみてどう感じるかが最も重要でしょう。見た目の美しさ、これもその中に入れましょう。目で見て楽しみ、走って楽しむ。 そのクオリティーは人それぞれで、何を優先するか、何を感じたいかによっても違うと思います。重くて遅いが時化にはめっぽう強い、吹けばビュンビュン走ってくれて、不安感など微塵も無い。それも良い。微風、軽風でもスイスイ走ってくれる。それも良い。どっしりした感じで、バタバタ波に叩かなくて、柔らかい、多少波が高くてもデッキに上がってこない。それも良い。抜群の腰の強さで、少々吹いてもフルセールで走れる。時折、もっと吹けとも思ってしまう。こういうのも良い。 結局、セーリングクォリテーというのは、いろんなパターンがあるので、どんなセーリングをイメージするかによって、良い、悪いが出てくる。実際は良い悪いでは無く、自分のイメージに合うかどうかの問題になる。 クルージング艇と称するイメージはどんなものか。腰が強い、つまりスタビリティーが高い。そこそこは走ってくれる。直進性が良いのが良い。時化に強く安心。どれもあいまいですから難しい。速さ1本なら、他は諦めるが、どれもこれもそこそことなると、そこそこはどこか? 腰が強くなると、幅の問題とバラスト比の問題、それに船体重心の問題がからみあう。おまけにそこそこ走れとなると、重量の問題とセールエリアの問題と水線長が絡む。そして、それらを統合して より良くしようと思うと価格がからむ。なかなか難しい問題なのです。 それでクルージング艇はふたつに分かれてくる。走る意識があるクルージング艇とそうでないクルージング艇です。走らなければ、スタビリティーもそう気にしなくても良いし、船体重心が高くなったとしても広いキャビンが取れた方が良い。その分セールエリアを小さくすれば良い。艤装もそういうやり方で良い。一方、走る方を意識したなら、上記の各問題を突き詰めて考える。価格とのからみもあるので、突き詰めすぎてもいけないが、どこでバランスを取るか。これらふたつは反比例の関係にあります。どっちを選ぶかは自由ですから、どんなイメージを持つかで決まる。 セーリングのイメージ、キャビンライフのイメージ、セーリングのイメージを持つなら、そのクオリティーをどうやって高めるか。これがドライブ感につながり、面白いに繋がる。セーリングイメージを持ってヨットを観察するところから始まる。それは艤装の仕方に明瞭にあらわれている。キャビンのでかさにあらわれているし、バラスト比にあらわれ、セールエリアにあらわれている。 でも、ひとつひとつを取り上げてどうこうというより、全部ひっくるめてトータルで見ないと、本当はわからない。微妙なバランスがある。それはプロのデザイナーの仕事です。セーリングクオリティーは数値だけの問題では無く、乗るのは人間ですから、感覚の問題も出てくる。 ノルディックフォークはセーリングイメージを持つヨットです。でも、重いし、セールエリアも小さめです。ただ抜群のスタビリティーで、実際に乗ると、水面が近いので感覚的スピード感があり、強風でのドライブ感が楽しめる。これらは数値では解らない。究極的に求めるものは数値では無く、ドライブ感であり、セーリングクオリティーの高さなのです。ここまで言うと、解りませんね。後は。感です。 無責任な結論ですが、感で感じ取るしかありません。 |