第八話 欧米市場

アメリカのセーバー社は東海岸にある、特有なトラディショナルスタイルで外洋
艇専門に建造するビルダーです。NEWS欄に書きましたが、この造船所からも、
クラシックラインを持つデイセーラーの建造が発表されました。

ご覧の通り、クラシックラインで
帆走性能を高め、気軽なシング
ルハンドも可能、コンセプトはみ
んな同じですね。まだ、価格の発
表はありませんが、安くは無いと
思います。水線以下は写っていま
せんが、だいたい想像つきます。
この船もきっと良い雰囲気をかも
し出すでしょう。解ってます。

アメリカの成熟した市場だからこ
そこういうヨットが受け入れられて
いる。

私が強調したいこ事は、欧米市場
は気軽な、それも帆走性能の良い
言うならばスポーツ的セーリングを
求めているという事です。所有して
いるだけのヨット、ほんのたまにし
か乗れないヨット、そんな事に飽き
飽きして、もっと気軽にセーリング
を楽しめるヨットは無いのか。昔
はセーリングはそこそこで良い、キ
ャビンの充実が優先だった。でも、
今はやっぱりヨットでセーリングがし
たい。堪能したい。ですから、セーリング優先で、キャビンはそこそこで良いという
具合になってきています。ヨーロッパでも同じですが、こちらはデザイン的にはモ
ダン、アメリカのそれとは違います。
でも、コンセプトは同じです。気軽なセーリングです。気軽にはデイセーリングを主
眼とする気持ちは軽やか、ヨットも快走、そういう動きです。彼らは散々キャビンで
遊んできたせいかもしれません。キャビンで遊ばない日本人はまだその域には達
しないかもしれません。でも、同じ道をたどる必要はありません。ヨットはやっぱり
セーリングが主なのです。

残念ながら、こういうヨットは高価です。でも、コンセプトには大変共感しています。
ですから、日本は日本のできるスタイルで、セーリングを楽しむ事を強調したいと
思います。いかにデイセーリングを気軽に遊ぶか、これが今年のテーマです。

昨年、横浜にイタリアのコメット33を進水させました。オーナーはまさしく、そういう
方で、シングルでこのヨットのデイセーリングを堪能されています。シングルにはこ
だわりませんが、シングルでも可能ならその方が、あらゆる状況での可能性が高い。
その為には、メインシートはコクピットにあった方が良い。舵持って、同時にメインシ
ートの出し入れが容易にできます。
オートパイロットを使えば、何でもできますが、それはナンセンスです。それじゃ、
誰かに運転してもらって、オーナーズチェアーにふんぞり返っているのが良いかと
いうと、そうでは無い。自分でやる、ドライブ感を楽しむから”面白い”のです。それ
にはできるだけ自分で操作する方が面白くなります。

デイセーラーとして銘打って建造しているヨットもありますが、その他でも、面白いデ
イセーリングは可能です。デイセーリングには帆走性能が高い方が面白いですが、
同時に操作性も扱い易い方が良い。それでメインシートはコクピットにほしいと思
います。

ちょっと大きめのヨットをシングルやダブル程度で気軽に楽しみたいなら、艤装品
ページに掲
載しました、セルフタッキングのジブブームやファーリングジェネカーの採用によって、
もっと気軽になれます。気軽にしょっちゅうセーリングに出ますと、必然的にセーリン
グに集中して良いセーリングを目指します。それは既にスポーツです。

釣りの世界で、食べる為に魚を釣るのでは無く、釣り上げたらリリースというやり方
をスポーツフィッシングと言います。釣り上げるまでのプロセスを楽しんで、晩御飯
のおかずを釣り上げるわけではありません。仕掛け、ポイント、作戦、そういう知的
ゲームを楽しんでいます。これと同じように、レースの勝敗を争うわけではありませ
ん。どこかに移動するのが目的でもない。
ただ、ヨットの深い知的ゲームを遊ぶ。これがスポーツではないでしょうか。うまい
人もいればへたも居る。でも、彼らは同時に自分のレベルで楽しむ事ができ、徐々
にレベルアップしていきます。それをデイセーリングで行うから、気軽なのです。
ああ〜、今日は良いセーリングだった
と感じる時、ヨットやってて、これほどの至福は他に無いと思うのですが。

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