第八十話　タック

少しづつ舵を切って上らせ、セールに裏風が入ったらシートを完全にリリース。一挙に舵を切ってしまうと今度は新しい側のシートを引き込む時、ウィンチで巻き込むのに一苦労かもしれません。それで、まだ風をはらまない状況である程度引いてこれると楽です。場合によっては、舵をその引き込みに合わせて一時停止させても良いと思います。すると、うまくすればウィンチで最後ちょいちょいで完了する。何度もやって、タイミングを掴む。うまくなると、実に楽にタックはできます。大きなジェノアを持ったヨットですと、ちょっとセール移動距離が長いので、できるだけスムースに、ステイなどで引っかからないように練習して下さい。

タック後はスピードが落ちます。艇速を得る為に一旦角度を落として、スピードが出て再び上る。波がある時など、波で叩かれるようなタイミングは避ける。微風時は舵を大きくきると抵抗ですからスピードが落ちるので、小さくゆっくりきる。シートを引いて、ウェザーをつけてヨットが自然に登るのにまかせて、それから舵切って、タックする。強風時、微風時、波がある時など、いろんな状況がありますので、どこまでやるかは自分次第ですが、いろいろ学んで解ってくると面白いし、解ればうまくなるので、レースじゃないからとも言えますが、面白がってやっても良いんじゃないかと思います。

ショートコースのセーリングではタック回数が多くなるので、いかに楽にスムースにやれるようにしておく事は大切です。でないと、タックするのが面倒くさいものになります。風下のシートのリリースのタイミング、リリースしたシートがどこかにひっかからないように、シートのねじれなどもとっておくとか、セールの結び目が大きいとステイにひっかかる事もありますので、できるだけ小さく、１本の長いシートを中央をクリューに通して、２本のエンドをこのクリューに通した輪に通すと小さくなる。その他、テーピングしておくとか、いろいろあると思いますが、工夫されたら良いと思います。

小さなジブというのはセールエリアが小さくなるので避けられるケースが多いのですが、考えようによっては面白いセーリングになるかもしれません。タックはより簡単ですし、場合によっては、舵を持ったままシートをウィンチにひと巻き程度して、もう一方の片手で持つ。風に合わせながら、舵の操作とシートの操作を同時に行う。結構面白いもんです。シートを一旦固定したい時、できれば、ウィンチのセルフテーリングでは無くて、カムクリートのようなワンタッチで固定できるようなのがあれば、今度また使う時にさっと取れるとも考えた事があります。

また、大きなメインセール、小さなジブならいっそのことセルフタッキングジブにして、タッキングをもっと楽にして、その代わりメインを中心に細かくトリミングをしてみるといのも良いと思います。ただ、セルフタッキングは上りは良いのですが、開く時、シートのリード位置が前過ぎてしまいます。以前は別にもう１本づつ左右にシートを取り、通常のリードブロックから引いたりした事があります。これはこれで良いのですが、シートの本数も増えるので、まだ試したわけでは無いのですが、セルフタッキング用のジブブームというのがあって、これは良さそうです。このブームの秘密は微風時、このブームは外に出る力が働くように造られています。つまり、シートを引いて、船体の中央を越えたらブームは風が無くても外に一杯出るようにできてます。ですから、微風時でも充分開いてくれます。角度はシートを引いて決める事になります。強風の時は風が持っていってくれますね。

セールエリアも大切ですが、最も大切な事は気軽にセーリングを堪能できる事ですから、大きなジェノアも良いですが、小さなセールにする事によって、もっと気軽になれるとしたら、それも良いと思います。それにリーフする必要性が減少しますね。最初から小さいんですから。残念ながら、今あるジェノアをファーラーで１００％ぐらいまで巻いて、その時だけセルフタッキングにするというような事はできません。巻いた時のクリューの位置が高すぎます。

上りはともかく、ジェノアは横からの風ぐらいまでは何とか使えますが、それより後ろになりますと、ジェノアはうまく開いてくれない。そこでスピンとかジェネカーの登場となりますが、もしそれらを展開しないのなら、ジブブームを使った小さなセールなら開けるので、ダウンウィンドではこちらの方が速いという事もある。つまり、上りから下りまでのトータルで考えると、必ずしもジェノアの方が速いとは言えないかもしれません。

とにかく、上りのセーリング、タックをスムースに遊んで頂きたいと思います。
こんな事を書くのは今更という感もありますが、もう一度、学んで、ドライブ感を取り戻してほしいと思います。車もバイクも自転車も動力がある。でも、ヨットは風なんですから、それは難しいに決まってます。という事は学んだ者だけが味わえる世界があるという事です。

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