第八十七話 我侭ヨットの薦め

ヨットにはいろんなサイズがあり、いろんな仕様があります。私の重要項目はデザインの美しさ、私の思う美女が良いわけです。そこをまず気に入らなければ面白く無い。気に入れば大事にしますし、もっと良く知ろうとします。

次にどんなセーリングができるのかです。どの美女なら私と気持ちよく遊んでくれるのか。この際、仲間を呼んだ時、家族を呼んだ時とかの事は考えません。何故なら、来る事は稀であると解っています。乗りたい時にすぐ乗れる。そうでなければ面白く無い。それで、シングルを設定します。
だいたい二人居るなら、たいていのヨットには乗れます。でも、シングルではそうもいきません。しかも、自分のリズムをできるだけキープできるように扱いやすい装備、配置等が必要になる。
そうやって我侭にヨットを選んだとしても、ゲストは充分に楽しんでもらえます。一人乗り用でシートが一個しか無いというのとは違います。

良いヨットはオーナーのリズムをキープする手助けをしてくれる。それでも完璧では無いので、完璧で無い部分は自分が協力します。逆に完璧なら自分が入る余地が無いかもしれないので、逆に面白く無い。自分の腕前がかなりハイレベルであるなら、どんなヨットでも難なく乗りこなしてしまうでしょう。でも、私のレベルは低いので、その分ヨットに助けてもらわなければ自分のリズムをキープできない。そこで、自分なりの条件を考える事になります。

それぞれ経験も違えば、全く初めての方もおられる。みんなが同じ条件では無いだろうと思います。まずは、無条件に自分の好きなデザインを選ぶ。これは惚れこむ為に重要ポイントだと思います。まずは自分のヨットに惚れる事です。これが動機としてはかなり大きい。その惚れこんだヨットは自分のリズムとそのヨットのリズムが合ってる。波長があってるから、理屈ぬきで正しい選択ではないかと思います。自分のスタイルとは全く違うものに惚れこむ事は無いのではないでしょうか。

そうしたら、いくつかの候補があれば、その中から、今度は理論的な選択をしていく。スタビリティーやセールエリアや、そういうものです。でも、惚れこんだヨットが複数あれば、どれも似ているのではないでしょうか。私共も、たまにですが、この方にはこのヨットが似合うと思う時があります。本人の趣味、こだわり方、雰囲気、そういうものから何となく感じる事があります。でも、本人は気づいていない事もある。そういう時、たいていは、理屈を優先しているケースです。もちろん、私の感が当たっている保証はありませんが、でも遠からずではないかと思います。

たいていは、家族の数や仲間とのセーリング、遠くに行った時はどうなる、そういう事を考えておられます。ですから、キャビンの広さに注目されるし、温水やシャワーなどに目が行く。それも良いですが、まずはヨットにほれ込まないと、その後の運営に大きな開きが出てくる。家族の為を思うやさしい気持ちはりっぱですが、そういう気持ちだけで、ヨットを5年も10年も運営できない。やはり、ここは自分の本心の我侭な部分をきっちり満足させておく必要がある。そのうえで、家族を乗せてあげたいなら、そうすれば良い。それができないヨットというのは皆無と言って良いでしょう。ただ、ヨットによっては狭いとかいうのはあるかもしれません。でも、家族は何を期待してヨットに来ているか。陸上では経験できない世界、家に居ては味わえない別の世界です。その中で暮らそうというなら話は別ですが、一時的に遊ぼうというのですから、コクピットに座っていられれば充分ではないでしょうか。時化たら、どんなヨットでも家族は快適とは思わない。程よい風だったらどんなヨットでも快適さを感じます。大家族でヨットに全員寝れないというなら、宿泊はホテルでも良い。このヨットは何の為にあるか、家族の為なら、そういう快適ヨットにして、メインテナンスは徹底してサービスの会社に任せるのが良い。多分、自分でほれ込んでいないと、そのヨットを熟知しようとは思わない。何年も何年もメインテナンスできない。そこには自分のリズムもドライブ感も無い。ヨットは極めてパーソナルなものだと思います。但し例外もあります。家族が無類のヨット好きである時です。それなら、家族みんなでセーリングできるヨットという考え方にもなる。しかし、残念ながら、こんな話は聞いた事がありません。

次へ     目次へ