第九十三話 ダウンサイズ

今持っているヨットより少しでも大きくする。これが買い替えの常識でした。ですから、買い換えでサイズダウンは勇気が必要です。もし、後で後悔したらどうしよう、やっっぱり大きい方が良いかなとか、これじゃみんなが乗るときは窮屈かなとかです。

私の知り合いで、これを実行した人が居ます。周りはなんで小さくするの?と不思議がっていましたが、その方曰く、今の俺ににはこのぐらいが丁度動かし易い。そういう事でした。周りに惑わされる事無く、自分が解っておられる。ですから、この方、良く出してあります。乗りこなしてあります。
大きくても構わんが、乗れなきゃ一緒よ。そう言われます。自分に合うサイズ、それが良いわけです。

欧米では70フィート、80フィート、100フィートなんてのが珍しくありません。彼らはフルタイムのクルーを雇い、給料払ってメインテナンスから操船をさせます。ですから船はいつもピッカッピカ、いつでも出れる体勢にあります。50フィート前後でも、フルタイムのクルーが居るかどうかは解りませんが、少なくとも、たいていメインテナンスは業者がかなり面倒見てます。これよりさらに小さくなってきますと、自分+クルーで全て面倒見れるか、業者に任せるかは微妙になってきますが、どのヨットもたいていはきれいにメインテナンスされてます。もっと小さくなると、自分で殆どやります。メインテナンスに関して言いますと、お金がたくさんあればでかいヨットでもOKでしょう。でも、そんなにお金をかけたくないなら、ビッグボートはメインテナンスが行き届かない。かと言って自分達でするには手が追えなくなる。

操船にしても、一人ではそうも行きませんが、もう一人フルタイムのクルー或いは、いつでも来てくれるクルーが居るなら、装備次第では相当でかいのが操船できます。でも、いつでもというわけにいかないなら、シングルをお奨めします。シングルで快適に気軽に操船するとなると、やはりそれなりのサイズダウンと装備が必要になるでしょう。

欧米では既にそういう動きが顕著です。かつてのビッグボートオーナーがメインテナンス、フルタイムのクルーなどを面倒がり、自分の年齢の事も考えて、サイズダウンする事はもはや珍しい話ではありません。そして、年をとっても、自分で操船するドライブ感を味わいたい、そういう現役ヨットマンでありたいという事でシングルハンド艇に注目が集まっています。世間は関係ない、実に自分のスタイルを見た合理的な決断です。

さらに、これらに加わって、新規のヨットマン達も様相が変わってます。ヨットが人生の全てじゃない。ヨットも面白そうなのでヨットをやる。でも、他にもしたい事は山のようにある。そういう一部なのです。それで、そんな方々にはたいそうなヨットより、気軽で、スイスイ乗れるデイセーラーが丁度良い。午前中さっと乗って、午後からは別のところにいく。或いは、夕方のサンセットクルージングを楽しむ。

サイズアップでもダウンでも、自分に合ったスタイルのヨットを選ぶのが良いわけです。価値観の多様化とはそういう事でしょう。どんなヨットを選ぼうが、誰に迷惑かけるじゃなし、大きかろうが小さかろうが、自分に合うヨットが良いわけです。でも、自分だけ違うヨットにするのは勇気が要るんですね。それを実行するには、相当自分とヨットがわかってないとできません。ですから、自分の本音を探り当てなければならない。でも、見栄なんかが入ってきますと、自分だけサイズダウンなんかはできなくなりますね。

サイズはメインテナンスと操船の両方を考えて、合うサイズを見つけます。操船にしてもオートパイロットばかりでは面白く無いです。

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