第九十七話 シングルヨットのメインテナンス
こういうヨットのメインテナンスはレジャー用に比べてシンプルです。ですから、把握するのが容易になります。だいたい電気冷蔵庫が付いてない。冷蔵庫はすぐには冷えないし、バッテリーの心配も出ます。かといって、エンジン回しっぱなしというのも無粋な話。アイスボックスに氷入れて、その日の分だけを入れて、コクピットに置く。充分冷えてます。こういう時は硬いボックスより柔らかいのが良いですね。 清水はあっても電動では無く、ハンドかフットのマニュアル式ポンプ、タンク容量も少ない。マニュアル式ですから、電源スイッチをいちいち探さなくてもすぐに使えます。それに、だいたい飲み水としてはみなさんペットボルトで持ってきますから、あまり使わないんですね、実際は。手を洗うくらいですかね。もちろん、温水も出無い。レジャーでもあまり使わないです。ガスコンロはカセットコンロが良いです。使わない時はしまっておいても良いし、ましてオーブンなどは使いません。トイレはマリントイレ、でも、これもめったに使わない。ノルディックフォークにはトイレが無いので、ヨーロッパではバケツを使うんですが、ちょっと日本人の感覚ではつかいづらいので、キャンプ用とか携帯トイレがあります。 こうやって見ていきますと、内容はシンプルです。レジャーならご不満も出るかもしれませんが、まさしくキャンプ感覚、でも実際のキャンプに比べると、かなり上等なキャンプですが、シンプルなので、どの配管がどこを通って、ここに来ているとか、ここがこうなって、あそこがこうなって、すぐに把握できます。つまり、何かトラブルがあった時、その判断がつきやすいという事になります。そしてシンプルでも、普段レジャーとしての使い方で考えても、そんなに遜色は無いと思うのです。 ですから、後は、無駄な余計な荷物はできるだけ積まないで、シンプルにして、セーリングの方に力を入れていきます。その為に、船底はクリーンに、ペラもきれいにしておきたいもんです。それにウィンチなんかも、1年に1回ぐらい、分解してグリスを塗布してやると、動きはいつも滑らかです。 シート類も硬くなったのは使いにくい、切れ掛かってのは論外、そうやって面倒見てますと、セーリングにおけるトラブルも少なくなる。 もしデッキ上に木部があったら、ニスを塗るとか前にも紹介しましたCetol Marine を塗るとか、或いは塗らないとか、とにかく美しくしておきます。サイズ的に自分でできるサイズ、これも楽しい作業です。 フルのデッキカバーとかかけてあるヨット見かけますが、あれなんかは面倒くさいだろうなと思います。出る時はまだ良い、でも帰ってきてまたフルカバーをかけるのは面倒です。たいてい、こういうヨットは動いてないです。オフシーズン用だと思います。それに係船ロープ、これもめったやたらにロープはわすなんてのも面倒です。何ヶ月も来ないなら別ですが、効率良く、シンプルに留めておきたいもんです。つまりは、出る準備、帰ってきての後処理、こういうのはできるだけ簡単な方が良いとおもいます。できるだけ気楽に出せる状況にしておく事が必要でしょう。後は、できるだけ回数乗る事です。1回の遠くより、短くても回数多く乗った方がいろんな状況を体験できます。ですから 1回に2,3時間で良いと思います。午前中、午後、夕方、夏なら夕方が良いでしょうね。 シングルで縦横無尽に走り回って下さい。また、ゲストが来たら十二分に楽しませてあげれるはずです。ゲストはキャビンの大きさを見て、わあ〜すご〜いとか言いますが、別にキャビンで過ごすのが楽しいわけじゃ無いんです。レジャー的セーリングがしたいだけなんです。それもちょっと舵でも持たせたら大喜びなんです。それも安心して。こういう時はレジャーセーリングにシフトして、楽しんでもらいましょう。ゲスト居て、無口なのは気持ちが悪いんです。おおいに、世間話から何やら話から盛り上げて楽しんでもらう。帰ってきたら、コクピットに座って、余韻にひたりながら、ちょっと一杯。 こんなレジャー遊びもできます。冒険セーリングは万能です。慣れた人は波がある時できるだけ揺れないように、そんな操船もできます。その場に合ったセーリングがでるようになります。 こんな話は時代に逆行してます。時代は大きなキャビンにフル装備の時代です。私の話はその反対です。今のヨットはレジャー的です。それが時代の求めている形かもしれませんが、いろんな事を考えるに、ヨットがレジャーである限り、日本人にはたいして遊べないというのが私の結論です。 それは周りを見渡せば明らかです。それで、冒険という言葉で皆さんをお誘いする事にしました。しかし、実際、こういう乗り方はとっても面白い。エキサイティングなのです。それが解ってくると、ヨットに対する考え方が変わってしまいます。若い人も年寄りも、みんなそれぞれの冒険をする事によってのみ、楽しむ事ができると信じています。それにキャビンの天井の高さに縛られないデザインは形として美しい、バランスが取れています。小さなサイズで立てるキャビンというとどうしてもずんぐりしたデザインにならざるを得ないですね。 |