第112話 セーリング

セールを上げるとぐぐっと引っ張られる感覚があります。シートを締めて、風にギリギリ
まで上る。船体はヒールし、滑らかに走る。風が顔に当って、そのスピード感を増す。
ジェノアトラックのブロックの位置は良いか?前にやればリーチは閉じ、フットが膨らむ、
後ろにやればフットはタイトになり、リーチが開く。バックステーを締めてフォアステーの
サギングを取る。メインシートを少し緩めて、トラックのブロックを少し風上側に引くとリーチ
が少し開く。ハリヤードにテンションを加えるとドラフトは前に移動し、緩めると後ろに移動
する。風が強くなってきたら、セールはフラットに。

こういう一連の操作にヨットは反応し、それを感じる事ができます。これらの作業は面倒で
しょうか?これらの作業の度に、ヨットが反応する事を自分が感じる事ができるのは面白く
ありませんか?面白いというのは思考でも理論でも無く、感覚ですから、感じる事が面白い
か面白く無いか. 考えただけでは解りませんね。

全てがジャストフィットさせるのは至難の技、完璧で無くても良い。ただ、自分が動かした事
によってヨットが正直に反応し、それを感じる事が大切です。楽しい以上のものを得られます。
どこかで酒飲んでも、旅行に行っても、ご馳走を食べても、豪華客船に乗っても、こんな感覚
は得られません。

一般に言うクルージングは旅行に行ったり、ご馳走食べるのとあまり変わらないでしょう。これ
は快楽、何度も同じ所に旅行したり、毎日同じご馳走では飽きますよね。でも、ヨットはその先
にもっとそれ以上の感覚があると思うのですが。毎日でも、同じ場所でも飽きません。


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