第24話 これからヨットを始めようという方へ 3
あとは回数乗ることです。乗るたびにうまくなります。当然ですが。ヨットは年数ではありません。乗った
回数です。何故なら乗るたびに状況が変わるからです。同じ海域、同じヨット、しかし、波や風の具合が
その日によって異なる。全て同じ条件というのは無いわけです。だから面白いのですね。
何度も乗っていくうちに頭で覚えた各装備の役割が体で覚えるようになります。と同時に本や人から聞い
た情報などで知識も高まっているでしょう。それに経験から来る慣れもあり、余裕も出てきます。帆走から
来る爽快さも深まってきます。一体感も出てくるでしょう。ここで終わらせてはなりません。
セールの知識を得て、どのように操作するかを試して行きます。レーシングヨットはほんのわずかのスピード
を得る為にありとあらゆる操作をします。反対にクルージングヨットの場合そういう努力をしない方も多い
ようです。でも、レーシングヨットとまではいかなくても、少しセールの知識を得て、セールを動かす努力も
してみる事をお奨めします。そうするとヨットとの一体感はますます強まり、自分の手足となるでしょう。その
結果、帆走の快感が増す事請け合いです。クルージングだから速く走る必要は無いと思うかもしれませんが、
クルージングでもそういう努力をして(これは楽しい努力です、苦痛の努力ではありません)得られるものは
計り知れません。ヨットですから絶対的なスピードがそれ程増すわけでは無いのですが、わずか1ノットが
何倍もの爽快感を与えてくれます。
この感覚はヨットならではのものです。他では味わう事のできないものです。自然の中を自然の力を借りて、
遊ばせてもらいます。日頃のストレスを吹き飛ばすにはもってこいではないですか。神経は集中し、研ぎ澄
まされ、それでいて平和です。ストレスを発散するにネオン街をうろつくのも良いでしょう。でも一時的な快楽
の追求よりヨットの持つ深い味わいは永遠です。終わりが無い、深いものです。
将来、島巡りをするにも、外洋に行くにも、その前にこういうヨットの醍醐味を味わって頂く事をお奨めします。
そして、いつも言うように自転車でサイクリングに行くが如く、セーリングに行こうという気軽さを持っていただ
ければ、楽しさもひとしおではないでしょうか。本当の「楽しさ」にはある程度の努力が必要です。快楽の奥に
喜びがあります。快楽に止めず、もう一歩踏み込めば、この高い買い物は充分に応えてこれます。ネオン街
の方がよっぽど高いものにつきます。
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