第49話 山登り

突然ですが、山の話です。昔、北アルプスに登った事があります。もちろん、それまでの
経験は全く無し。たまたま誘われたから行ったんですが、1日、そうですね8時間から10
時間ぐらい歩いたような記憶があります。最初は色々景色なんか見たり、あれこれしゃべ
りながら、考えながら歩いていたと思うんですけど、徐々に何にも考えなくなっていたような
ただ、歩いていたという気がしますね。そして昼飯はインスタント、これのうまい事!インス
タントがこれほどうまいと思った事はなかったです。そして、再び頂上目指してひたすら歩く、
歩く、歩く。これを数日間続ける。雨も降れば、寒さもこたえるし、疲れる。疲れるから休む、
休むと寒くなるので、適当にまた歩き出す。歩くと疲れる。そしてまた寒い。こういうのを繰り
返していると、そのうち休んでいる時に眠くなる。こうやって寝て、寒さで死ぬんだろうな、な
んて事を考えながら、さあ行くぞ、と仲間に言われて、また歩く。崖もあれば、クレバスもある。

それで、ようやく頂上に着いて、その日は飯食って寝る。飯の何とうまいことか。でも、飯食う
のにも疲れてた。   翌朝、実に爽快な気分だったですね。それまでに味わった事の無い、
爽快感は言い表せ無い。それに自分が大きくなったような気がして、日常の悩みなど、つま
らん事、そんな気分にさせてくれる。実におおらかな気分でした。山に登るとね、皆、正直に
なるんだ。と先輩が言った。そうね、そうだろうね。何も隠すなんて必要無いような、おおらかさ
が充満してる。

これが自然が持つ力ではないでしょうか。全てを忘れて、自然の中で神経が集中していると、
自分が蘇ったような気がします。人工の物の範囲で遊んでも、それは人間の意識の枠内で
しかないが、自然は人間の意識を超えている。そういう所に入ると、別世界が開けてくる。感
動するというじゃ無いんですね。非常に静かで、感動を超えたような、そんな気がしました。

皆さんも山登りでも、ハイキングでも、もちろんヨットでも、自然の中に入ってみる事をお奨めし
ます。快楽とかいう次元を超えた最高の気分が味わえますね。これは味わった者しかわからん。
それで、インスタント食品の残りを帰ってきて食べてみたんですが、これがまずい、非常にまず
かった。よくぞこんな物食ってたな、と思いましたね。今はおいしいのかもしれませんが、当時
のはひどかった。


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