第81話 良いものが売れるわけじゃない

世の中みてますと、必ずしも品質の良いものが売れるわけではないですね。売れてる
から良いとは限らない。そこが難しいとこです。その商品がきちんと評価されたうえで、
売れるようになれば良いですが、誰が評価するのかは消費者です。それで、消費者が
判断できるようになるには、その分野が相当浸透しないとできませんね。時間が必要
です。消費者の目が肥えてこなければなりません。

その上で生き残って高い評価を得た物にはブランド力がつきます。ただ、このブランド力
もどういうブランド力かを見なければなりません。世界で販売されているブランドならば、
世界でどういう評価をされている物かという事ですね。でも、これは難しい。海外でどういう
評価かを知るのはなかなか日本にいては難しい。

品質の良い物を安くなんて合言葉みたいに言いますが、画期的な生産方法の確立や複雑
な流通経路だったものを無くすなんて事でも無い限り、無理です。品質の高い物を安くなんて
できません。良い物は高いんです。

最近、中国は世界の工場になりつつあるという話を聞きますが、今日、テレビでホンダ工場
が車生産に中国で成功している話がありました。かつては中国生産では本国での品質と同じ
高い品質を達成するのは難しかった。でも、ホンダは成功しているし、他の家電メーカーも同じ。

考えてみると、それは中国にもその製品が浸透してきているからではないでしょうか。自分達も
使っている家電や車の生産ですから、自分達も理解しやすい。しかし、自分達が使っていない物
を生産する時はこうはいかないと思います。

一時期台湾で建造するボートが非常に安いので日本にも相当輸入されてきました。でも品質は
良くなかった。トラブルが多い、左右対称では無いなんてものもありました。でも無理ないんです。
彼らはボート遊びが許されてなかったのですから。自分達が使って無いものを理解せよなんて無理
ですよ。

だから大抵ボートはその本国で造られます。人件費によって安くするのは難しいです。ではどうするか、
ヨット、ボートはできるだけモールド(型)を造ります。船体,デッキだけではなく、内装やいたる所の
部品をできるだけモールドからFRP積層して造ります。内装床のモールドにはシート、バルクヘッドの位置
からサイズまできちんと出てますから、各部品を積層したらバタバタくみ上げるだけで良いのです。
昔の作り方とは時間がずいぶん短縮されました。それによるコストダウンのメリットは大きいです。
でも、船体は弱くなりましたね。船底にあるストリンガーなどもモールドで積層して、底にペタッと接着
するだけですから。FRPの厚みも薄い。

外洋艇はまだ職人の手が入っています。人件費、工程の違い、しっかりしたヨットを造るにはそれだけ
手間がかかります。残念ながら、工場で機械でバンバン造るにはヨットは向いていない。FRPの積層
だけでも、本当は誰でもできるものでは無い。だから高いです。

安いのがいけないと言っているわけではないんです。むしろ良いんです。ただ、正しい評価をしましょう。


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