第89話 セールエリア

セールはヨットの第一エンジンですから、これがヨットの重さに対してどれだけ大きいかを
知る計算式があります。これも他の違うヨットとの比較に使うと良いでしょう。

排水量とはそのヨットの重さです。そしてそのヨットが海水に浮かんだ時に押しのけた海水
の重さと同じです。つまり、重いヨットの方がより沈みますから、その分かき分ける水の量が
多いわけです。だからスピードが遅い、或いはより多くのセールエリアを必要とする。

セール面積 ÷ (排水量 ÷ 64)2/3乗=SADR

比較する場合は同じ条件を揃えなければなりません。セールエリアの場合、造船所によって
出し方が違う場合があります。例えば、標準仕様に140%のジェノアがあったりするとその面
積を計算に入れている場合があります。通常はジブは100%ジブとします。
I,J,P,Eが解れば、これで計算します。
I=ジブセールの高さ
J=フォアステーからマスト前面までの長さ
P=メインセールの高さ
E=ブームの長さ

従って、ジブセールは I x J ÷ 2、 メインセールはP x E ÷ 2 で、それぞれの面積がでます。
これを足した数値を使います。

例えば、セーバー402の場合
I=54フィート、 J=15.5フィート、 P=47.75フィート、 E=17フィート
排水量は19,300ポンド

セールエリアの計算
I x J ÷ 2 = 54 x 15.5 ÷ 2 =418.5 (100%ジブのセールエリア)
P x E ÷ 2 = 47.75 x 17 ÷ 2 =405.875(メインセールのセールエリア)
合計 824.375 (単位は平方フィート)

824.375 ÷ (19,300 ÷ 64)2/3乗
= 824.375 ÷(301.5625)2/3乗
=824.375 ÷ 44.914
=18.354

*参考 難しい数学の話ですが、(301.5625)2/3乗というのは
( )内の数値を2乗し、ある数値を3乗して、その数値( )内の数値
になる値です。
この場合、301 x 301=90,601
44.9 x 44.9 x 44.9=90,518(上と近い値です)
この場合、細かい数値まで出す必要は無い。
この場合全てを計算すると値は18とでます。

通常、この値が15以下なら、セールエリアが小さ過ぎます。15以上ならまあまあ良い、18とか20
とかという値で、スタビリティーが充分高く、水線長/排水量比が低いなら、かなりのハイパフォーマンス
艇といえるでしょう。スピードを妨げる要因は水との摩擦と波です。つまり、排水量の重いヨットの方が
かきわける水の量が多い。SADRは波の方に関係しており、中風から強風に関係します。微風の場合
は比較的、水との摩擦に関係してきます。これは水面下の船体の表面積に関係するわけですが、通常、
こういうデータが出てる事は無いですね。残念ながら。

表面積は同じ重量でも形状によって異なります。つまり、同じ排水量でも船型によって水線以下の表面積
が異なる。ということは面積が少ない方が微風では速いという事になります。でも、データが出ない以上
これは解らない。それで、通常、軽い方が表面積も少ない。

例えば、10cm x 10cm x 10cmの立方体と20cm x 10cm x 5cmの直方体は同じ体積を持つ。
これが同じ重量500gだとすると、両者とも同じ体積分だけ沈む。両者とも半分沈むとすると、前者は10cm x 
10cm x 5cm =500立方センチメートル、後者は20cm x 10 cm x 2.5cm=500立方センチ
メートルと同じですから、喫水線は両者とも高さの半分まで沈むと考えて正解となる。でも、表面積を比べると、
前者は600平法センチに対して、後者は700平方センチになる。つまり、前者は水線以下は300平方センチ
の表面積を持ち、後者は350平方センチの表面積を持つ。という事は、同じ重量でも前者の方が摩擦が少ない
という事は微風では前者の方が速い。という事になります。実際、データ無しで見分ける事は至難の技ですが。

もちろん、この場合でもセールエリアが同じなら、という条件付きです。ヨットのサイズが異なるのに同じ
セールエリアを持つという事は無い。或いは、同じサイズで、同じ重量、同じセールエリアなら船型の
違いによって差が出る、微妙ですが。


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