第98話 孤独を楽しむ
家に居たら家族が、仕事に行けば同僚や取引先が居て、どこに行っても誰かが
いる。一人になる事はあまり無いと思います。通勤時の車の中かトイレぐらいです
かね、ひとりで居る時は。誰かがいれば少なからず気を使います。楽しさもある。

ひとりで居るという事を考えた事あります?考えてみれば、こんな贅沢無いですよ。
どこに行ってもひとりで居る事ないんですから。そして、たったひとりでセーリングに
出る。クルーが居ないからではありません。その贅沢を味わう為です。

誰かと一緒に過ごすのは楽しいものです。わずらわしいからひとりで出るのでは無い。
孤独を満喫する為です。ひとりで出ると鋭敏になります。意識は自分とヨット、そして
自然の事しか考えない。そのうち自分を意識しなくなり、ヨットと自然だけになる。そして
もっと進むとヨットさえ意識しなくなり、自然だけになる。波と風を考えるのでは無く、感じる
だけになる。無意識で自然を感じる。

そうですね、ヨットは自然を感じる為にある。こうやってしばらく走った後は何とも言えない
気分が沸き起こってきますね。この間、感動したわけでも無い、爽やかさを感じたわけ
でも無い、でも自然とエネルギーが充満します。神経は鋭敏になる。それを感じるには
ひとりが良い。

ひとりで2時間も3時間も黙って過ごす事って無いでしょう。そういう時間は贅沢だと思いま
せんか?どんな高級艇を持つより、贅沢なのではないでしょうか。セーリングして楽しいとか
爽やかだなんて事はまだ入り口、その奥に進む。


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