第三十九話 クラブハウス

日本のヨット界と海外のそれとでの一番の違いは何か?いろいろ考えて、国民性の違いとか、社会習慣の違い、休みや遊びに対する考え方、いろいろですが、それらが総合してというのもあるでしょうが、最も違うのは社交の場、つまりクラブハウスではなかろうか。

マリーナのクラブハウスはオーナーだけが入れる特権があり、そこにはオーナーだけの社会がある。クラブハウスに行って、一杯飲みながら、他のオーナーとの談義、自慢話もあるだろうし、セーリング談義もあるだろうし、とにかくオーナーの社交の場、そこが楽しくて、マリーナに出かける。
ヨットを出す事もあれば、この社交の場で1日を過ごす事もある。こういう和やかな雰囲気の場があるのと無いのとでは大きいのではなかろうか。マリーナはヨットの保管場所でもあるが、同時に社交場でもある。

日本のマリーナにもクラブハウスがあります。しかしながら、何かどこかのレストランに入ったのと同じような雰囲気である事が多いようです。仲間同士の社交の場という感じでは無いような気がします。そこに行くには、自分の仲間を引き連れて、仲間内でしか楽しめない。ひとりで行ってもつまらない。挨拶程度はしても、それ以上に親しくなるには、何がしかの出来事を要する。それは日本人の国民性なのでしょうか。本当は、みんながそこでは仲間意識があって、誰でとでも気軽に話ができて、情報交換もあれば、いろんな話で社交が続けられると良いのですが。

アメリカ人とふたりでエレベーターに乗ったら、大抵はそのアメリカ人は声をかける。目と目が合えばにっこりする。日本人にはちょっとその点が違う。でも、郷土が同じだった事で打ち解けたり、仲間である事を意識すると、親しくなれる。親しくなれれば、マリーナで過ごす1日も結構社交の場として楽しめるので、暇な時はマリーナにでも行って遊んでくるか、と考える事もあるだろう。でも、このあたりがちょっと日本人には苦手なのかもしれません。

それで、クラブハウスを覗いて、知り合いが居なかったら、自分のヨットに行く。そこで過ごすかヨットを出すかしかない。そう考えると、マリーナに行く回数も減ってくる。できれば、マリーナが
自分のヨットに用事が特に無くても、ヨットを出さなくても、マリーナに遊びにいける場所であれば、もっと人が集まり、賑やかになり、活気を持ち、そして、その事がもっと人を惹き付ける。活気あるマリーナは楽しいものです。それで、自分のヨットではプライバシーも保持できる。

ヨットをいかに運用できるかは大切な事かと思います。それで、シングルだのダブルだの、デイセーリングだのと能書きを書いてきました。これらは、特に意思を強く持った方でないとできないかもしれません。でも、それは少数です。だから、マリーナには人が少ない。これらも大切ですが、そのベースとして、マリーナのあり方も重要なのではないかと思う次第です。マリーナは社交の場として、活気つく必要がある。それがあれば、もっと多くのオーナー達が集まり、活気が出て、もっと多くの一般客も集まってくる。

但し、国民性を考えた場合、それが可能だろうか?それは演出の仕方次第かもしれません。何か方法はあるだろうと思います。ヨットクラブを造るとか、もちろん、それだけでは駄目ですが、何もイベント的なレースばかりがヨットクラブじゃないだろうし、何かがほしいと思います。

マリーナに行くのが楽しい。それが必要ですね。それがベースにあって、丁度良い風が吹いてるので、ちょっとセーリングしてくる。普段はこれぐらいの気軽さが必要かもしれません。ただのヨット保管場では寂しいですね。なかなか難しい事かもしれませんが。マリーナが社交の場ならば、ヨットクラブは何もセーリングをいかに運営するかばかり考える必要は無いかもしれません。マリーナに居て何ができるか?ヨットを含めたマリーナ社交を考えた方が良いかもしれません。クルージングのプランやレースのプランは考えますが、そうなるとそれに参加する事が必要になります。もっとその前に、マリーナでできる楽しい一時、これがベースに必要なのではないか。言うのは簡単ですが、じゃあどうすればいいか?私、業者としては、何をすればいいのか?

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