第三十一話 トラディショナル

ヨットデザインにはいわゆるトラディショナルデザインが普通に存在します。これはヨット界だけじゃないかな〜? もちろん、モダンなデザインのヨットはたくさんありますが、でも、結構、トラディショナルなデザインを好む方は多い。私もそのひとりであります。

どういうわけか、落ち着く感じがします。それに何十年経っても、デザインの美しさは衰えない。多分、我々人間が持つ共感する処、緊張に対する緩和、そんなフィーリングを持っているのではなかろうか?

そのトラディショナルなデザインも、進化を続けています。パッと見た目はトラディショナルでも、リグや構造、工法等々は最新であり、また、水線以下はモダンなデザイン。セーリングパフォーマンスを考えれば、新しいデザインの方が良い。だから水線以下はモダンにします。しかし、水線から上はトラディショナル。

こういうトラディショナルとモダンの融合は結構使われており、スーパーヨットなんかにも、そういうヨットが結構多い。クラシックとなりますと、ちょっと気持ち的にヘビーな感じにもなりかねませんが、トラディショナル系は、重量も軽めになってきているし、そのセーリングパフォーマンスも高い。

本格的にスピードを求めれば、それは最新デザインの方が速いとは思います。最近のモノマランとか言われるヨットなんかそうでしょうね。でも、それは個人的好みの問題で、必ずしも、スピードが全てでは無い一般ヨットマンにとっては、トータル的セールフィーリングというのは重要だろうと思います。

ヨットとは一体何なのでしょうか? 求める処がいろいろです。我々は外界を五感で感じます。その中でも目で見える世界は最も強く感じられます。だから見ためのデザインは重要です。その次は、多分、体が感じるフィーリングかな。 スピード感もそれに入るし、ヒールしたり、滑らかさの感じや、レスポンスなんかも体で感じます。鼻は匂い。潮の匂い。舌はスプレー浴びた時のしょっぱさ。音は風や並みの音。どれもが、総合して海とヨットを感じさせてくれますが、でも、やっぱり最も影響を与えるのは目と体でしょうね。

美しさをどこに感じるか? 美しいヨットで、グッドフィーリングを感じてセーリングを楽しみたい。それだけであります。理屈じゃないんですね。

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