第七十一話 安定性
| デイセーラーは基本的に船体自体の重心は低く建造されています。それは他のクルージング艇とは大きく異なります。そのうえでのセーリングにおける安定性の評価をどうするか？ ここが重要なポイントになるかと思います。 まず第一点はバラスト重量です。これは明白に解ります。それに対するセール面積も解ります。という事で、セール面積÷バラスト重量の計算を試みました。しかし、これはこれで参考にはなるかもしれませんが、決定づける程の力は無いようにも思えます。 キールのデザインも、バラスト重量と同じ様に影響力が大きい。例えば、同じ重量でも、深いとそれだけてこの原理で言っても、深い方が安定性は高くなります。さらに、デザイン的に、バルブキールの場合、重い塊を最下部に設置すると尚の事です。 最近のキールは、程度の差はありますが、なるべく、最重量物を最下部に設置するようにデザインされてきています。従って、キールの深さという吃水ですね、それが影響を与える。とは言いましても、あまりに深いと危険性もありますし、そこは程度問題ですが。 例えば、バラスト重量 X 吃水 という計算をしてみたらどうだろうか？もちろん、これで厳密に安定性を図る事はできませんが、少しぐらいは現実に近づくのではなかろうか？ 他の艇と比較する場合の参考程度ですが。それで、バラスト重量 X 吃水 ÷ セール面積 というのはどうでしょう？ もちろん、十分では無いでしょうが、それでも、前の計算よりは、少しは現実に近づけるかなと思います。セール面積１㎡あたり、何キロのバラストで支えているかです。あくまで比較の材料ですが。 ただ、デイセーラーの場合はシングル仕様が前提にありますので、バラストを軽くする事で排水量を軽くしようという事では無く、船体はできるだけ軽く、でも、バラストは重くという、クルー無しでの前提ですから。従って、デイセーラーは安定性は高いと言えます。バラスト比ではありません。 という事で、デイセーラーに限って言えば、パフォーマンスに関しては、SADR値で決めても良いのではないかと思います。それと、見た目のデザインですね。クラシック系かモダン系か？ 御勧めはSADR値２０前後、この数値は沿岸クルージング艇の中では高い方の部類ぐらいだと思います。でも、デイセーラーの安定性や海水面に近いコクピットの位置等、フィーリングは全然違います。気軽にセーリングをスポーティーに楽しむ事ができます。代表格はアレリオン２８です。 或は、もっとスポーツ性を高めた処では、SADR値２５前後、これはクルーザーレーサー程度。デイセーラーでは、アレリオン３３スポーツ、オプティオ９という処です。 ちなみに、アレリオン３３、３８、４１等はその中間にあたります。 そしてレーサー並みのポテンシャルを持つデイセーラー、SADR値３０前後、これは先日進水しましたディナミカ９４０です。初心者の方には御勧めできませんが、経験者の方には非常に面白いセーリングができるかと思います。スポーツカーで言うなら、ディナミカと同じイタリアのフェラーリという処かな？ スピードポテンシャルは、いろいろバリエーションがありますが、全てのデイセーラーは、シングルハンドを前提に排水量、バラスト、セール面積、操作性がデザインされています。これが他のヨットとは全く違う処です。それに、海水面が近いというだけでも、何ともフィーリングが違うんですね。 セーリングを堪能するに相応しいヨットです。 |