第六十六話 スピードと安定性
一般的に言えば、高い安定性があると、強風時でも安心度が増します。しかし、一方では、セーリングスピードが落ちてくる。スピードを取るか、安定性を取るかという話しにはなりますが、それは程度問題という事になると思います。 風が弱い時は安定性は問題になりません。しかし、風が徐々に強くなるに従って、バラスト重量が効いてくる。キールは船体がヒールして横に張り出してきますと、それに伴い、キールが戻ろうとするパワーが効果を発揮してきます。だから、これが重い方が効果的という事になります。 安定性が高いヨットはセール面積に対して、このバラストが重いわけで、この相対性に対して、バラストの実質重量が重いのか、或は、セール面積が小さいとも言えます。という事は、高い安定性を持つヨットは、少しスピードを犠牲にしているという見方もできます。セール面積をもっと大きくすれば、速くなる。 だから、セール面積を大きくすれば良いかというと、それはスポーツ度を上げるかどうかという事になり、オーナー側の希望と合うかどうかになります。つまり、オーナー側が、どんなセーリングを求めていいるか? 逆に言いますと、そのヨットはどんなオーナーを想定しているかという事になります。 いろんなデイセーラー群の中で、超ハイパフォーマンスを誇る、スポーツ度の高いヨットでは、そのバラスト重量をセール面積で割りますと、20前後です。これはバラストが軽いわけではありません。バラスト比としては、45%とか50%とかと、かなり高い方です。しかし、セール面積を大きくしていますから、そういう数値になってきます。その代わり、セール面積/排水量比は高く、30前後です。 こういうヨットは微軽風に速いし、中風でも速いし、強風では早目のリーフは必要ですが、それでも速い。ただ、スポーツ度が高いので、操作する側も、それに応じた操作となり、つまり、セーリングスポーツ度を高く遊びたい方向けです。 一方、もっと楽にセーリングを遊びたい方には、バラスト重量/セール面積比が30というのがあり、安定性もかなり高いので、フルセールで走れる範囲は広くなります。リーフのタイミングが遅めで良いという事になります。セ−ル面積/排水量比は20前後です。 こういうヨットは中風から強風に安心度が高くなる。つまり、オーナー側の操作にしても、前記のヨット程スポーツ度は高くないので、楽に操作できます。でも、微軽風においては、少し不満も出てくるかもしれません。オーナーに寄ります。 もちろん、このヨットにしても一般クルージング艇と比較しますと、パフォーマンスとしては高いです。あくまで、デイセーラージャンル内の事です。そして、前記二つのヨットの間に、いろんなヨットがあり、それらは、スポーツ度のレベル違いと考えて良いと思います。 スポーツ度が高いと速い、しかし、それなりの操作が必要になり、その操作を遊べるなら、非常に面白いという事になり、そこまでの操作はしない方には、持て余すかもしれません。ただ、これも強風時であって、微軽風から中風ではそこまでは無い。 もちろん、このバランスはいろいろありますから、各ヨットのデータをじっくり見る必要があります。スピードと安定性、でも、デイセーラーに限って言えば、そのスポーツ度を、セール面積/排水量比だけで判断しても良いかもしれません。これが低いと楽ですが、微軽風では物足りないかもしれない。これが高いと、スピードは速いが、特に、強風では早目のリーフとかの対応になる。 という事で、セール面積/排水量比が20前後で、比較的楽にスポーツできるし、例えるなら、クルージングの高いレベルの帆走性能、25前後でスポーツ度が上がり、レーサークルーザーのレベルかな、そして、30前後ではもうかなり高いスポーツ度を示し、ここまで来ると本格レーサー並かと思います。ただ、デイセーラーは、シングルハンド基本ですから、一般のレーサー/クルーザーやレーサーよりも、バラスト重量は重くしてあります。何しろクルーなしの前提ですから。操作性もしかり。 デイセーラーは、そういう高いレベルの帆走性能を、他艇より楽にシングルで操作できる様にデザインされています。それが他と大きく違う点です。それゃあそうです。その分、キャビンが狭いのですから。その見返りはセーリングにあるわけです。だから、スポーツカーとコンセプトは同じなのです。 |