第十二話 造船所の試行錯誤

   
   

前話のサンビーム32.1を見ても、造船所もいろいろ試行錯誤をしているんだな〜と思います。クルージング艇は同じ長さでもボリューム拡大化を図ってきました。でも、それもそろそろ頂点を過ぎてきたのかもしれません。では次に何を提案してくるか? 非常に興味があります。 その一例がサンビーム32.1です。

実は、もう何年も前に同じようなコンセプトで建造されたヨットがありました。上の写真のセーバースピリットです。全長37フィートに対して幅は3.18mと広くはありませんでした。キャビンはワンルームで個室トイレ、ギャレーはコンパクトでした。コンセプトとしてサンビームと同じですね。でも、当時、あまり売れなかった。こういうヨットはまだまだデイセーラーが広がっていく時期でしたので、中途半端に見えたかもしれません。でも、今建造したらどうだろう? なんて想像します。 案外、これは行けるかも?

下の写真が当時のセーバースピリットの内装です。メインサロンからバウバースまでワンルーム、後部側はギャレーと個室トイレ、クルージングにも充分ではないかと思えます。当時、デイセーラーコンセプトとして出していましたが、今なら何でしょう? デイセーラー/クルーザー?



デイセーラーの気軽さとパフォーマンスを持ちながら、そこそこ充分なキャビンの広さを持つヨット。大航海でもしない限り充分ではなかろうか?

別の面を見ると、デザインにおける競争もあります。モダン系デザインとクラシック系デザイン、量産艇はみんなモダン系デザインなので、数的には圧倒的にモダン系が多いが、クラシック系にも根強いファンも多い。クラシック系はみんな少量生産です。クラシックヨットだけのレースなんかも開催されています。それどころか、海外では自社建造のクルージング艇だけのレースなんかも造船所が主催していたりします。



レースは本気のレースもあるけれど、様々なコンセプトで誰もが楽しめるレースというのがたくさんあります。日本でも、もっと遊び感覚のレースも増えれば良いかもしれません。要は、楽しめる機会をたくさん設ける事でヨットの普及に寄与していると思います。これがなかなか日本では難しいのかもしれませんね。

サンビーム32.1なんかですと、レースを楽しむ事もクルージングを楽しむ事も両方あり。要は、デイセーリングから近場のクルージングまでをカバーする事ができる。想像するに、多くの方々の使い方を充分カバーできおるのではないか? 今後の他のモデルもこういうコンセプトが出てくると良いのではなかろうか?残念ながら、セーバースピリットはもう建造されておりませんが。また復活を期待したい処です。それに、個人的には、こういうコンセプトのいろんなモデルが出てくると面白くなるかな〜と思います。

つまり、これは近場のコンセプト、そこを中心に、もっとデイのセーリングパフォーマンスに力を入れるか、或いは、もっと遠くへの旅に力を入れるか、これはオーナー側の試行錯誤になります。


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