第十三話 スピリット 30

   
   

ジェイムスボンド映画で、カジノロワイヤルだったか、主演のジェームスボンドがヨットに乗ってるシーンがありました。そのヨットのビルダーが英国のスピリットヨット社で、その時のヨットはスピリット54、モダンクラシックデザインの高級ヨットビルダーでしたが、何を思ったか、この度スピリット30という30フィートデイセーラーを建造しました。

全長30フィートで前後に長いオーバーハングがありますから、キャビンは無し。当然ながら、ギャレー無し、トイレなんか毛頭ありません。全くの役立たずのヨットで、セーリングする為だけのヨットです。そんな役立たずですが、どうも魅力を感じてしまいます。セーリングだけで良いじゃないか、なんて思わせてくれる。この写真だけでは解らないかもしれませんが、兎に角、美しいヨット、これなら走らせるだけでも気持ちは上がる。それを傍から見ているだけでも、つい振り返って2度見してしまうかもしれません。このヨットには他のヨットには無い気持ちの良いセールフィーリングがあるに違いない。

ハイパフォーマンスはもちろんですが、こんなヨットは無計画で、気が向いた時にふらりとセーリングを味わってくるのに良い。何も無いからセーリング以外の事を期待する事も無く、兎に角、気持ちの良いセーリングだけを期待します。その他の事はどうでも良い。そんな気にさせてくれます。

このヨットは木造です。価格も非常に高い。安かったら是非自分の物として可愛がってやるのにな〜。粋なヨットを粋に操作して走らせる。その他に何が必要だろう?と、そこまで割り切れたら、セーリングは完全に私のものになる。でも、割り切れないからこそ、ああでも無い、こうでも無いと悩んだりしますが、何にも無いと返って悩む事も無く、しかも、このヨットが唯一できるセーリングを深く味わえるのではなかろうか?仏教的に考えると、欲という煩悩から逃れる事はできないが、煩悩が無くなると返って深く味わえるのかもしれません。悟りを開いた人用かな〜? でも、女性と二人で乗るなら最高か! おっとまた煩悩が出てきました。でも、それがあるからこそ面白いとも言えますね。〜凡人より。


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