第十六話 日本型のヨットの使い方

   
   

あくまで一般的と言いますか、平均的と言いますか、例外はあるものの大半の使い方においてですが、クルージング艇が多いのは世界共通だと思いますが、その使い方においては、欧米は滞在型で、日本はあまり滞在せず、宿泊設備としてはちょっと使うぐらい。つまり、欧米はヨットに泊まって楽しむ事を普通の人達が普通に行い、日本ではセーリングの後は泊まらずに家に帰る。

そうするとヨット市場のメインは欧米ですから、デザイナーも造船所もそこを狙って滞在するに快適な仕様を考えますから、それが今日のクルージング艇のあり方になっていると思います。ですから、キャビンは広い方が良い、装備も多い方が快適になる。欧米人にとっては良いんだろうと思います。

ところが、日本ではセーリング後にヨットに泊まりませんから、そこまでキャビンは必要か?なんて思わざるを得ませんがどうでしょうか? 広ければ良い様に思えます。でも、あまり使わないし、その弊害も無いわけじゃない。でも、市場にはそういうヨットばかりですから選びようが無い。

そこで、日本ではデイセーラーが合うのではないか?或いはデイセーラー/ウィークエンダーが合うのではないかと思ってきました。泊まらないなら、セーリングの方を主体に遊ぶか、近場の旅を主に楽しむか、と考えると、むしろ昔のクルージング艇の方が良いかもしれない。キャビンがでかいと重心位置も上がるし、風圧面積も上がる、ボリュームがでかいから圧倒感もある。そこいくと昔のヨットはフリーボードも低く、ボリュームもそう大きくない。最近の新しいヨットはデッキが高くて、桟橋から乗るにもよっこいしょ。

それで中古艇を考えても良いかもしれない。それをレストアして綺麗にして乗るという考え方もあるんじゃなかろうか? まあ、私のお薦めはデイセーラー/ウィークエンダーですが。デイセーラーにもキャビンは狭いながらもある。寝泊りしないならキャビンが狭い分セーリングの方が楽しめる。

という事で、デイセーラーは日本で発展しても良さそうな気がしますが、残念ながらそうはなりません。でっかいキャビンの方が人気が高いのです。それであまり動かず、マリーナに係留されたままのヨットが多い。欧米では係留されたままでも、別荘の様に泊まりに来る事も多い。マリーナにいるだけで、そこはリゾート地みたいな感じ。日本ではそういうマリーナも少ない。

上の写真は34フィートのキャビンです。欧米流にもっとキャビンを有効活用するのならとても良いと思います。日本もそういう遊び方をする人達が増えれば良いのですが。もしそうなれば、冷蔵庫が活躍する、温水シャワーが活躍する、ガスコンロが、電子レンジが、いろんな装備が本当に重宝します。

でも、ヨーロッパで新しいコンセプトのウィークエンダーと言いますか、デイセーラーとクルージング艇の間ぐらいのヨットが出てきた事は新しい流れが出来てきたと言えるかもしれません。このコンセプトは日本にはぴったりでは無かろうか? 日本の市場が大きければ、発展の可能性はある。1億2千万の人口があり、世界的に見ても長い海岸線がある。本来なら、もっともっとヨットが増えても良いはずなのです。そうすると、使い方ももっと吟味されて日本型ヨットの使い方が発展していくのではなかろうか? 今は欧米型に追従するしか無いかもしれません。ただ、その抵抗はデイセーラーにあり。割り切れれば、日本式楽しみ方として発展できるだろうに。


目次へ      次へ