第二十七話 ヨット事情 

   
   

オーナーの高齢化という事情によってヨット界から去っていく人達が少しづつ増えてきており、従ってその分中古艇が市場に出てきています。また、もう一つ高齢化の現象として、もう遠くには行かないが、でもまだ現役を続けたいという方々もおられ、そういう方々は気軽にシングルでも乗れるヨットという事で、これまでのヨットよりサイズダウンされる方々もおられます。

時代によって状況は変わるもので、昔は買い替えはサイズアップするのが普通でした。その方々が高齢化によってサイズダウンかやめてしまうかという状況です。彼らのヨットが市場に出てくるわけですが、概ね古いヨットが多く、30年前後という処でしょうか。

それでこの先どうなっていくのかと考えるに、やはりまだリニューアルとまでは行かないにしても、整備をしていく事になります。もちろん、日常的な整備では無く全体をとおしての整備が必要とされていく。何故ならヨット自体はまだまだ乗れるという事が解ってきたからです。この先いつまで乗れるのか? 昔、FRP船について半永久的とかいう話もありましたが、それも整備次第、今後10年や20年、もっとかもしれませんが、まだ実際に時が来ていないので解らないとしか言いようが無いですね。

そうしますとヨットの寿命とは何か?恐らく、新しいモデルが次々に建造され、当然ながら性能面や便利さという面では古いのより優っている処が多いと思われますが、新旧を比較して性能や便利さにおいて誰もが古いヨットに見向きもしなくなった時こそが寿命と言えるのかもしれません。

でも、ヨットというものは何も仕事に役立てようという事は無いわけで、そうすると性能や便利さだけで判断されるものでは無く感性に寄る処も大きい。そうすると昔のデザインが好きだという方も少なからずおられる。そういう事を考えると寿命というのはあるのだろうか?無いはずは無いが?

欧米には新艇建造はしないが、レストア専門の会社もある。造船とレストアの両方をやる会社もあります。ですから、古いけどとても綺麗に整備されているヨットも少なく無く、こうなると船齢なんて関係あるのかと思わずにはいられません。レストアの決め手は何だろう? 恐らく、デザインなのではなかろうか?見た目のデザイン、その他は費用はかかるがどうにでもなる。美しい、カッコイイと自分が感じ、レストア費用との兼ね合いで決意する。最新のヨットでは得られない惹かれる何かがある。味わいは理屈を超えてます。

速いヨットは面白い。しかし、レースでも無い限り自分のスピード感で良い。パワーアシストも良いが、自分の力加減を感じながら操作する処に面白さがある。いろいろ考え方はあるものです。これからは、自分の感性、感性から出てくる考え方、つまり、自分自身が主役の場に出る時代かな?他人が何を言おうと自分が楽しければ、面白ければ、とやかく言われる筋合いは無い。

そうするといろんな考え方が生まれ、新艇にしても通り一遍のヨットでは無い個性のあるヨットが増えてくるでしょう。欧米がそうであるように。そうすると個性のあるヨット、つまりスペシャルなヨットも出てくる。既に欧米がそうであるように。そうやって市場は拡大し熟していくのかもしれません。

市場の全体を歴史的な流れで見ていくと面白いものです。この30年で随分変わってきました。幅は各段に広くなり、フリーボードも高く、お陰でキャビンが拡大しました。その分排水量も重くなった。でも、一方でキャビンの狭いセーリングに特化したデイセーラーが出てきた。工法もハンドレイアップからバキュームバッグ方式が主流になってきています。構造も変わってきています。昔、サンドイッチ構造もあれこれ言われましたが、今ではサンドイッチ構造が普通です。昔のヨットの方が良かった点もあります。これからの30年においても大きく変わっていくかもしれません。変わっていくでしょう。全ては技術革新と人の考え方によるものでしょうね。


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