第四十話 外洋パフォーマンスクルーザー(レーサークルーザー)

   
   

レーサーという言葉に多少の違和感を感じる方もおられるかもしれません。別にレースをしたいわけじゃないから。でもその後にクルーザーという言葉があるように、このジャンルのヨットはクルージングにも適している。つまり、速いセーリングパフォーマンスを持つクルージング艇、それでハイパフォーマンスクルーザーという言い方もします。

旅もするがそれも大洋を渡るロングクルージングも視野に、例え大洋を渡るわけでも無いとしても、それでいて日常的には近場でのセーリングをより高いパフォーマンスで楽しみたいという方、もちろんレースにも。ロングレースにも。そういうハイクラスのコンセプトを有したハイパフォーマンスクルーザーはあらゆるヨットライフに呼応してくれます。

その良い例としてご紹介したいのがスウェーデンのアルコナヨットです。レーサーを建造する場合はそのスピードにフォーカスされますから、ある意味では簡単です。しかし、レーサークルーザー(パフォーマンスクルーザー)の場合は走りだけでは無く、外洋での安全性や快適性にも考慮しなければならないだけに難しいと言えます。速く走る為には排水量を軽量化しなければならない、でも同時に高い船体剛性でなければならない。こういうヨットは例えレースしなくても、セーリングがより面白く快適に感じられるようになると思います。

アルコナヨットは34フィートから46フィートまでの建造でしたが、この度50フィートのニューフラッグシップ艇をデビューさせました。船底には亜鉛メッキされた鉄製のフレームを設置し、キールやマストはそのフレームに接合され負荷をフレームで受けています。また、サンドイッチ構造の船体に加えストレスがかかる部位についてはカーボンを使用し強化と軽量化、さらにインテリア木材の多くはサンドイッチ構造として、これも強化と軽量化を実現しています。数あるヨット群の中においてこの造りはトップレベル、大洋を渡る性能を持ち、且つハイパフォーマンスを実現しています。それだけに一般量産艇の価格ではありませんが、充分その価値が認められたヨットです。



操船は二人でOK、その他の方々はゲストとして招待しても良い。近場のセーリングから外洋に及ぶ大海への旅、もちろんロングでのレースにも性能を発揮します。北欧のハイクオリティーヨットです。

クルージング主体の方でも旅以外では日常的にセーリングを楽しんで頂きたいと何度も書いてきました。そういう時、やはり少しでも走る方が面白さが違います。世界には様々なタイプのヨットがありますが、レースはしないクルージング派だと思っても、そのままクルージング艇と決めつける手は無い。現代のヨットは進化し続けています。


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