第四十四話 デイセーラーにおける考え方

   
   

近場でのセーリング、シングルハンド、そういう観点からしてデイセーラーのサイズは30フィート前後だろう。それ以上でかいヨットをデイセーラーだとはいえシングルでの操船は難しい。というのが日本での大方の見方だろうと思います。しかしながら時代は徐々に変化していきます。何故その変化が起き得るのかは、30フィート前後のデイセーラーがある程度普及して慣れてくるとオーナーも造船所もデザイナーだって変わっていきます。

現代ではもっと大きなデイセーラーがプロダクションとして建造されています。プロダクション建造という事はレギュラーに需要があるからで、そうで無ければプロダクション化する意味がありません。この傾向を助長するのにはいくつかの要因があると思います。

近場といえど湾内から出れば外海になりますから海には大きなうねりを伴う事があり、それには水線長が長い程楽になれる。これは全てのヨットに共通する事です。クルージング艇にしたって30より40,40より50です。コンセプトの違いには関係ありません。

次に艤装品の進化です。例えばサイズが大きくなれば必然的にセールも大きくなります。いくらセルフタッキングジブとはいえセールはでかいしましてメインもでかい。 これに対して艤装品はメインセールのファーリング、電動ウィンチ、油圧バックステーアジャスターとバング、そういう物が普通に採用されるようになりました。これによって必要な力は各ボタンを押す力という事になります。これとてクルージング艇も同じです。さらにバウスラスター、スターンスラスターなんかもあります。

そして最も大きな要因だろうと思いますが、パワーアシストがあるにしても全長だけでは無く、全体から来るボリュームの圧倒感があります。同じサイズのクルージング艇とデイセーラーでは船体ボリュームが全然違います。幅、高さがまるっきり異なります。それがクルージング艇の広大なキャビンを造っています。一般的に50フィートのクルージング艇をシングル操作できる方はスラスターを使っても多くは無い。ボリュームから感じる圧倒感は半端ない。

しかし、デイセーラーが普及している市場ではそういうハードルが低くなっていきます。パワーアシストさえ設置すればシングルでも充分だろうという考え方になっていきます。実際そうなんです。それで造船所は大きなサイズも建造していく事になります。もちろんパワーアシスト、メインファーラー、場合によってはバウスラスターを設置、全体の船体ボリューム感に圧倒される事がなければ艤装品で充分カバーする事ができます。

クルージング艇にしてもパワーアシストを使っていけば理屈としてはシングルが可能です。オートパイロットも使いながら、ステアリングを離れていろんな操作ができます。しかし、デイセーラーとの違いは圧倒的な船体ボリュームにありますから、これは風圧面積による受ける影響の違いも出てきます。あの大きな船体をひとりで動かすのか?と考えた時のプレッシャーは半端ない、特に最近のヨットはでかいですから。もちろんこれは各人の感じ方の違いによります。、

という事で、デイセーラーには40オーバー、50オーバーのサイズでもシングルハンドを考慮して建造されています。下の写真はイーグル54です。これもシングルハンドで操船できます。世界はそんな風に動いてきています。例えシングルで乗る事は無いとしても、シングル操作ができればゲストは全く初経験の方でも気軽に招待できるという具合です。



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