第五十六話 遊び上手

   
   

日本人は勤勉さで有名ですがこの30年間の経済の低迷はどうした事でしょうか?それに比べて海外の方はと言いますとGDPはちゃんと伸びてきています。どうも勤勉さだけではいけないのかな〜?発展期には外国に追いつけ追い越せで頑張ってきました。それは日本人の勤勉さが故に成し遂げられてきたと思います。発展を目標とする見本もありました。しかし、日本が先進国として世界第二位にまでのし上がってきてからはどうもいけません。目標が見えなくなったのかな?

日本が先進国になって、おまけに長い海岸線を持つ。そうなると海外の造船所は当然ながら日本のマリンマーケットに期待します。ところが、そうは行かなかった。勤勉さはあれど遊びに対してあまり上手いとは言えなかった。仕事するのがが美徳だった。だから日本のマーケットは海外が期待する程のものでは無かった。それに対して欧米は遊び好き。その遊び上手の国が発展し、勤勉な日本が遅れを取る。これはどうしたものか?

以前、イタリアに行きました時駅のホームに時計があって時刻は私の時計が示す時間と大きくずれていました。それで別のホームにも時計があったのでそれを見ますと、これまた全然違う時刻を示していました。イタリアってこんなもの?でもそのイタリアにはフェラーリを生み出し、ボートと言えば高級艇のリーバを生み出し、多くのスーパーヨットも建造しています。また、イタリアはアメリカに次ぐマリンのマーケットなんだそうです。

発展期には勤勉で良かった。しかし、先進国になってからは自分達で発展の方向性を決めていかなければなりません。それは勤勉さだけでは不十分なのかもしれません。創造力が必要なのかもしれません。それはどうやって獲得できるのか? という事になりますが、そのひとつとして遊び上手になる事だと思います。遊びはストレス解消になりますが、それだけでは無く、好きな事に夢中になって一生懸命遊べば上手くなりたいとか、より知識を得たいとかそういう事に繋がっていくと思います。その為には考える必要があり、想像する、そして創造するという事になっていくと思います。無から何かを生み出す力が得られるかもしれません。

セーリングは理論的に考え走らせますが、同時に感覚も刺激されていきます。つまり頭脳と感性の両方で対峙する事になります。それを発展させる為に考え、工夫し、感じる。それらは好きだからこそやれる事であり、何の利害も無い仕事じゃないが故に自由に好きに発展させられます。ヨット全体を見、各部を見る。バランスも必要です。この事は案外知識や技術を得られるだけでは無く、心を進化させてくれるのではないかと思います。仕事では無い何か、それは遊びであり、その遊びに夢中になれる事は大切な事ではないでしょうか?

仕事に夢中になって発展させていく事もあります。しかし、さらに発展させるには無から有を生み出す力、ひらめき、偶然等が必要になってくる。それを養うのに遊びのパワーは侮れないのではなかろうか?そういう点では欧米人は遊び上手です。社会のシステムを変えるとか、合理化とか、規制緩和とかいろいろやってますが、それだけではこの壁は打ち破れない。頭の良い人達は理論的に話ます。理論的だからこそ説得力もあります。でも、どうも何か違う。その理論が格差社会を生み出し、それが次の社会問題になっていく。それでさらにその次が必要になってきます。それが何かは解りませんが、でも、やっぱり遊びは侮れないんじゃないかと思います。仕事も大事、遊びも大事、その遊びのひとつとしてセーリングに遊び上手になる。技術、知識、感性、頭脳、身体、人間のあらゆる機能をバランス良く使って面白さを感じて夢中になって発展させていく。これで何かを生み出す基礎的なパワーが得られる様な気がします。もちろん、そんな目的とかは考えないでただ夢中に遊ぶ事が最も大事で、その結果無から有を生み出す力が得られる?かもしれません。


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