第六十三話 EAGLE 38 シングルハンドデイセーラー

     
Jクラスヨットを思わせるクラシックデザイン、ミニJとも呼ばれ前後の長いオーバーハングがクラシック感を醸し出す。しかし、水線から以下はモダンデザインでキールも見えてます。コンセプトは近場でのセーリングと近場への旅、ウィークエンダーです。近場で遊ぶならパフォーマンスは高い方が面白い。セーリングを面白くする為です。

ハルとデッキはGRP/ビニルエステル樹脂/バキュームインフュージョン工法 、それに全体に人工チークを張り付けキャビントップとコクピットの回りはマホガニーのニス仕上げ、これが上の写真の通りの標準仕様です。最近では人工チークを採用する造船所が多くなりました。写真の黒いセールはオプションですが、標準はノースのNPC-Nordacクロスカットセール、ジブはファーリング105%、
ステアリングはステンレス製にマホガニーのニス仕上げのホィールリム。

キャビントップにはハリヤードウィンチ、コクピットにはジブシートウィンチとその後方にメインシートウィンチが配されています。標準はセルフテーリングのマニュアルですがもちろん電動に変更可能。メインシートはウィンチにリードせずにアフトデッキ下にキャプティブウィンチを設置すればシートを引くだけでは無くリリースも電動でボタンを押すだけです。ブームバングはリジッドタイプ、バックステアジャスターともに油圧に変更可。つまり、このヨットはマニュアルでももちろんシングルですが全部電動にして楽しても良い。ジブファーラーのドラムそのものも電動にもできます。

内装を見ますとバウにダブルバースで二人、その後部右舷側にシングルバース、左舷側にはギャレーシンクとトイレ、但し個室トイレではありません。使う時はキャビンの入口を閉じる事になります。その他オプションにはなりますが温水、冷蔵庫、コクピットシャワーなんかもあります。

しかし、このヨットの本領はセーリングによって発揮されます。デザインは有名なオランダのフックデザイン、クラシック感を強調しながら高いパフォーマンスをシングルでも自由自在に遊ぶのがこのヨットです。
全長は11.77m(38.62’)、幅は2.60m(8.53’)、標準キールはバルブキールで1.85m(6.07’)浅いタイプもあります。排水量は4,700kgで軽く、セール面積は59.8u。という事はSADR(セール面積/排水量比)は21.7でレーサーの様に速いというわけではありませんがスイスイ走る高いセーリング感を味わえると思います。また、ジェネカーやコードゼロを使う場合、バウスプリットは必要としませんしファーリングタイプにすれば操作も楽にできます。

デイセーラーの特徴のひとつは気軽に出せる事。思いついた時に誰かを誘っても良いし、ひとりでも気軽、ピクニックをするにしても良く走るので楽しさは違うし、ましてセーリングをスポーツするなら面白い。さらに旅を考えるならキャビンは狭いとは言っても3人までなら泊まる事もできます。まあ、近距離向きで船内泊なら1,2泊という感じでしょうか。ホテル使っても良いですが。つまり、近距離を軸に気軽に楽しめるヨット、そして何と言ってもこのデザインの美しさは圧巻です。いわゆる皆が振り返って見たくなる。派手さでは無く、クラシックな落ち着いたイメージです。また、こういうデザインは今後何十年経っても廃れる事はがありませんね。クラシックはいつの時代でも人気が高いです。

最後にこのヨットはご覧の通りライフラインがありません。無くても安全です。でもどうしてもと言われるならライフラインを設置する事も可能です。ヨットは海をフィールドに海と風を楽しむものです。セーリング性能は重要なのは当然としても、このデザインの美しさも遊びとしてのフィーリングにとって重要な要素だと思います。

海で何をしたいのか? ヨットで何をしたいのか? レースしないからって、それならすぐにクルージング艇という結論を出すのは早計です。陸上生活の延長的に想像するかもしれません。やってみないと解らないかもしれません。ならば、近距離か遠くかを日常生活からスケジュール的に考えては如何でしょうか?
連続で一週間以内か、以上か? それで選択するヨットも違ってくると思います。近場で日常的に面白さを創る事ができる事はとても重要な事と思います。


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