第八十話 時代をリードする

かつて一部の方が始めた事が、やがては全体に広がる。昔の車しかり、テレビしかり、何でもそうではないかと思います。当初は非常に高価で、ほんの一握りの方しかできなかった物が、それが普及するにつれ、誰でも所有できるようになります。彼らは文化の牽引者です。ヨットも同じです。
将来、日本全体がヨット遊びを享受できるようになるには、今、できる方がそれを堪能し、その面白さに気付き、それを他人と分かつ必要があります。ですから、今、ヨットに乗れる方々は、そういう使命をも持っています。自分を楽しませ、他人を楽しませる義務があると言っても良いかもしれません。できる方はそういう使命がある事を認識してください。

と言いましても、する事は自分を楽しませる事が先決です。良くないのは、自分を楽しませない事です。ほったらかしにしている事です。ヨットのあらゆる楽しみ方の、自分が最も気に入った方法で
自分流の楽しみを実践する事が、ヨット文化の牽引者としての使命なのです。もし、今楽しんでいないのであれば、ヨットは楽しくないですよと無言のうちに表現している事になります。それは未来のヨット文化の広がりの邪魔をしている事になりますね。それではいけません。

欧米のヨット文化も、そういう流れで、今では多くの方々がヨット遊びの恩恵を受ける事ができるようになりました。あらゆる文化はそうやって広がり、そして、欧米でのもうひとつ注目すべき事は過去の伝統芸でさえ、一部の方々がサポートして、その技術などは捨てられずに、未来へ引き継がれて行っているという事です。木造艇が今でも愛好され、その技術は残されています。スクールさえあります。それは個人の単なる趣味かもしれませんが、単純に経済的観念だけでは無く、ちゃんと文化を継承する事にも繋がっています。日本では船大工という職は無くなりつつあります。その他の伝統芸もなくなりつつあります。惜しい高度な技術は、経済的観念だけでは残す事はできません。しかし、その技術は一旦無くなると、それも取り返す事は至難な事です。資本主義に生きながら、でも経済だけでは人間の文化は語れない。資本主義の権化であるアメリカでさえ、その文化を残しています。

ですから、歴史ある日本も、、使命感を持って、文化をリードし、維持していく必要性があります。その文化は経済的では無いかもしれませんが、長い年月の間に、きっと深い重みとなって、国の価値を表現する事になると思います。

ヨットを遊ぶ事はこんなにも意味深い事なのです。ですから、もっともっと楽しむべきです。退屈なんかしていたら文化のリードはできません。今ヨットをやられる方はそういう文化の牽引者ですから、遊ぶ事は罪悪どころか、使命でもあります。

私の使命はその中でもデイセーリング、スポーツクルージングの普及だと思っています。是非、これに乗ってください。こういう楽しみ方が多くなれば、やがては誰もがヨットを楽しむ事ができるようになります。それは初心者から超ベテランでさえ、そのレベルで堪能できる事であるからです。普及すると安価なヨットも出てくるでしょう。増えると易く維持できるようにもなるでしょう。こうやってヨット文化は一部の方々にリードされた恩恵を受けて、全体が享受できるようになります。だからどおって事は無いのですが、楽しむ事が必要なのです。ほったらかしは罪悪です。

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