クルージング&セーリング
さて、ここまで進んできた時点で、全体の概要的な事を書こうと思います。何も今頃に?という感じもしますが、ある程度ヨットの事が解った時点での方が良いかと思います。 木を見て森を見ずという言葉がありますが、各部の操作の仕方という事も重要ですが、全体を掴むという事を見て、その上で各部を見ていくという方が、何の為にそうしているのか、全体の動きが解った方が良いし、理解もしやすいと思います。 さて、これまで見てきましたセーリング。基本的な事であり、実を言いますと、もう慣れさえすれば、近場のクルージングを楽しむ事ぐらいはできると思います。もちろん、ナビゲーションとか、荒天時にセールを小さくするとか、そういう学ぶべき事はまだありますが、セーリングに関しては、この程度でも慣れればできると思います。実を言いますと、多くの場合がクルージングにおいては、エンジン走行が多く、又はセールとエンジンの併用です。 そこで、ここらで分岐点が出てきます。近場のクルージングを遊ぶなら、これ以上詳しいセーリングについて、知らないでもクルージングならばできない事は無い。ヨットはレースかクルージングという、このふたつしか無かった。それで、多くの方々がレースには興味ない、よってクルージングとなります。しかしながら、レースとクルージングの差が大きくなり過ぎたように思います。レーサーはもちろん、セーリングをもっともっと学び、セーリングをしますが、クルージングはセーリングをあまり重要視しないという傾向です。セーリングはヨット特有であり、セーリングこそが、ヨットの醍醐味を味わえると考えます。従って、クルージングをされる方々も、もっとセーリングを楽しんで良いと思います。クルージングをする時は旅として楽しみ、それ以外の時は、セーリングを堪能して頂きたいと思います。 従って、ここから以降は、もっとセーリングをするという意味で、もっと深く見て行きたいと思います。さて、そのセーリングですが、繰り返しになりますが、セーリングは風の強弱に対して、どれだけの風を取り込み、ヨットが走るコースに対して、セールをどれだけの角度に設定するかという事になります。そして、風の取り込み量は、セールの形によって行われ、その設定角度を崩さないようにして、セール形状を決める。セールの形というのは、風をセールにきれいに流す事によって行われ、それがうまく行かないと風が乱れ、思ったパワーを引き出す事ができません。 例えば、深いセールカーブに対し、強過ぎる風はきれいに流れる事ができなくなり、パワーも過ぎる事になります。弱い風は、深いセールカーブに対してもきれいに流す事ができるし、浅くてもできますが、浅いセールカーブはパワーが不足します。そのヨットが持つ性能に対して、できるだけ多くのパワーを、でも過ぎないパワーを引き出す事が、このセーリングの遊びだろうと思います。要は、セールの形を整えながら、その時の風の強弱に対して、風がきれに流れるようにセールを形造り、また、その時のパワー(揚力)が大き過ぎず、小さ過ぎずというポイントを探します。 ある風に対して、どれだけの揚力を引き出すかに対するセールの形状、そしてヨットが走るコースに対してのセールの角度、このふたつを角度を変えずにセール形状を調整する。或いは、セール形状を変えずに角度を調整する。そして、セール形状も角度も変える。それをどういう方法でやるのかという事になります。 深いセールカーブは大きな揚力を生み出し、カーブを小さくする事によって揚力を調整し、そして、常に風をきれに流す事になります。走れるのはどんなでも走れます。そこがヨットの懐の深さ。 初心者からべテランまで、誰もが楽しむ事ができす。 ひとつひとつのセール形状の造り方や角度設定は、誰でも学ぶ事ができます。しかしながら、どこが適切であるのか、それを見つける観察力が重要になり、よりベターを目指して、いつかベストを目指し、そうやりながら、セーリングの深さを味わうというのがセーリングだろうと思います。それは経験により、自分で手に入れるしか方法はありません。行動する者のみに与えられる面白さだと思います。取り合えずセーリングするのは、そう難しい事では無いと思いますが、セーリングをもっとしようと思いますと、奥が深いと言われます。その奥を見るのがセーリングであり、それを楽しむのがセーリングだろうと思います。 是非、クルージングの方にも、セーリングを味わってはどうかと思います。遠くに行く必要も無く、目の前の海域でちょっとの時間で、誰もが、その気になりさえすればできる事ですから。それに10年、20年という歳月をかけるに値する深さがあり、極めて知的なゲームとも言えます。その深さがあるからこそ、大の大人が夢中になれるかと思います。それも自分のペースに合わせてやる事ができます。 もっと進みますと、セールの形や角度ばかりでは無く、走るコース取りも絡んできますと、もっと深いセーリングとなります。徐々に、ゆっくり、時間をかけて、楽しみながらセーリングを覚えて、レベルアップしていくセーリングを楽しんで頂きたいと思います。 |