第十四話 あこがれセーリング

レースをすると相手の先を走るか、後ろを走るか、明確に解ります。明確ですから、目標や何を望んでいるかも明確です。非常に解り易い。もっと気軽に、安価に、近場でエキサイティングなレースができるなら、レースはもっともっと流行ったのではないかと思います。それはワンデザインでレースになるだろうと思います。どんなヨットでも、みんな同じヨットならハンディ無しで、ヨーイドン、最も速いのが勝ち、それも腕の差が、日頃のメインテナンスがもろに出る。これが最も面白い、誰でも参加できて、誰にでも可能性があるレースなんではないかと思います。欧米では確かにレーティングレースも盛んです。でも、このワンデザインレースも盛んに行われています。日本の不思議は、みんなと同じで安心したいのに、細かい所で同じは嫌というのがあります。ですから、同型艇が近くにあまりありませんので、このワンデザインレースはできない。普段はクルージング、重いヨットでも、同じヨットなら面白いレースができる。でも、当分日本は無理ですね。示し合わせて、何人かで同じヨット買ったりすると、面白いんですが。

ヨーロッパのノルディックフォークレースは100艇ぐらい集まります。アメリカのアレリオンもレースやってます。スピン無しという規定があるのも面白い。ニューヨークにあるクラブから10艇の発注があったそうです。レースするそうです。もちろん、普段はデイセーリングで遊んでます。ヨットを面白くする演出なんでしょうね。

日本ではこういうワンデザインレースは無理なので、レースとなるとハンディレースになりますが、ハンディがあるとはいえ、レーサーからクルージングまで一緒に走るんじゃ面白く無い。最近流行りのホワイトレースなんかは、良いアイデアですね。でも、できればワンデザインが面白い。でも、無理なので、それはそれとして、日頃はセーリングを堪能する乗り方で、感覚重視の乗り方をする。非常にあいまいな言い方ですが、実際、そうやって乗っていた事があります。誰と競争するでも無く
ただ走る。でも、そのうち、感覚が鋭くなってくるのに気づきます。

とても良い感じで走る。その感覚です。それが場合によっては、前の時よりちょっと遅いなとか、何か違うなとか、解ってくる。逆に、前よりも良いという事もある。回数乗ってますと、少しづつですが何故違うのかも解ってくる。そういう感覚を楽しむのも良いもんです。舵に感じる感覚、シートを引いた時の感覚、いろんな感覚がありますが、そういうひとつひとつの感覚が以前と比べてどうかというのが、理屈では無く、まず感覚として解ってくる。そして、乗っていくうちに、何故かも解ってくる。そうなってきますと、どんどん面白くなってくる。微妙な感覚まで解ってくると、ますます面白い。
そういう乗り方はいかがでしょうか?その為には、同じヨットに乗る。できるだけ回数乗る。いろんな状況がありますから、すぐに感じる事では無いかもしれませんが、少しづつ解ってくる。解るとうまくなる。うまくなると面白くなる。

大きなヨットでは舵を握る人間とシートを引く人は別になります。そうしたら時々交代するか、人間が多いなら順番でやるか、とにかく全てのポジションをやると面白いと思います。でも、シングルですと、自分で引いたシートの感覚と同時に舵を握る手に伝わる感覚も味わうわけですから、もっと面白い。こういうデイセーリングにはシングルは究極の面白さがあると思います。

いろいろ感じて、いろいろ考えて、いろいろ工夫していく。それが面白い。単なる遊びという域を超えて、探求する喜びが沸いてくる。これがスポーツクルージングだと思います。こういう遊び方は日本人に合うと思うんですが。他人と比べてうまいへたでは無く、以前の自分と比べてどうかですから、誰でも楽しめる乗り方ではないでしょうか。

ちょっとピリッと冷たい空気の中を、走り抜ける感覚は、ちょっと味わえない充実感さえ感じます。それが楽しさを越えて、たんなる面白さを越えて、何か別の感覚が襲ってくる。ランナーズハイならぬセーラーズハイではないかなと思いますね。基本的にはヨットは何でも良いかもしれません。でも、何より、自分の好きなヨットですね。可愛がってやらないといけません。前にも言いましたが、ヨットは彼女と同じですから。気に入った彼女じゃないと、今一気持ちも入りませんから、大事な事だと思います。これはもう理屈ではありません。感覚的な判断です。それで良いとおもいます。どんなに素晴らしい性能を持つ気に入らないヨットより、まずは惚れこむ事が大事ではないかと思います。
ですから他人にどうこう言われる筋合いは無い。あばたも笑窪だろうが、構わない。彼女を他人にとやかくは言われたくありません。いろんな好きがあるから、いろんなヨットが存在できます。いろんな美女が存在できる。だから、面白い。是非、お気に入りのヨットでセーリングして下さい。探求してください。海はまだまだ未知の世界、冒険心を少し持てば、飽きるはずは無いと思うのですが。

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