第二十三話 洋上のダンス

アレリオンに20フィートというサイズが加わりました。コンセプトは全く同じで、シングルのデイセーリングですが、このサイズですからキャビンは一切無し。日本ではなかなか難しいかもしれませんが、ビデオがあり、2艇でデモンストレーションのセーリングをしています。見ていますと、もう自由自在に操っています。上りで走ってきて、180度回って、今度は下り、まるで、エンジンのついたモーターボートを操っているかのように、走っています。こういう乗り方ができると楽しくてしょうがないでしょうね。まるで、フィギアスケートのようです。何もアクロバチックなせーリングは必要ありませんが、思い通りにさっと右行ったり、左行ったり、Uターンしたりできたら、きっと面白いに違い無い。
真っ直ぐ走って、タックして、しばらくまた真っ直ぐ走る。必ずしもそうである必要は無いし、目的地が無いので、どうにでも走れる。このビデオ見て感動しました。

デモビデオ

タック回数が多いと大きなジェノアを入れ替える作業も大変ですが、だからと言って、ジブを小さくしただけではセール面積の関係上面白く無い。このアレリオンもそれからノルディックフォークもそうですが、最初から小さなジブと大きなメインの組み合わせです。ですからタックは容易です。それをアレリオンはセルフタッキングにして、さらにジブブームをつける事によって、ダウンウィンドの効率を上げた。よって、ジェネカーやスピン無しでも、あらゆる角度を効率良く走れるようになりました。

このシステムはアレリオンの28、33、38も同じ、コンセプトはみんな同じです。ただ、サイズ違いというだけです。サイズが大きくなりますと、ここまで細かに帆走するというのはちょっと難しいかもしれません。シートを引く量も違ってきます。しかし、他の艇より遥かに操船しやすい、エキサイティングなスポーツセーリングが楽しめる事は確かです。大きなサイズでも、これだけ自由自在にスイスイ走れるようになると、これはもう面白さの頂点ですね。あこがれセーリングです。

昔、子供の頃、自転車で走ってきて、ブレーキかけながらハンドルを切ると、後輪が滑って、その場でターンする事ができました。そんな風に遊んでいた頃を思い出します。それをヨットでやるんですから。

セルフタッキングジブですから、ジブもメインもシートは1本づつ。メインセールもジブセールもブームがあるので、ダウンウィンドでも良く開いてくれる。ですから、舵を切って、それにあわせて各シートを出したり引いたり、タックやジャイブの面倒くささもありません。それどころかエキサイティングでもあります。上りで真っ直ぐ走ってきて、ターン、360度回転して、また上りで走る。こんな事は普通はしませんが、しようと思えば簡単にできる。この時、シートは一切扱わなくってOKですから簡単です。舵操作だけ、でも、面白そうじゃないですか。このおかげで、風で飛ばされた帽子をいくつも拾う事ができたと言ってます。

360度回転が簡単なら、90度、180度、タック、ジャイブなんか簡単なもんです。舵切って、シートを出す、或いは引く、これだけです。少しぐらい引いたり、出したりが遅れたってかまいません。でも、うまくなれば素早くできる。ジェネカーやスピン無しでも、あらゆる方角にエキサイティングな走りを実現する事ができる。それも簡単に誰でもです。デイセーリングでは、ここまではいかないにしても、同じようにスポーツして、エキサイティングに楽しんでみるというのも、ヨットの醍醐味ではないでしょうか。アレリオンは洋上のダンスと表現しています。まさしく、その通りで、まるで踊っているかのように、スケートのように、スキーのように、その場で、いろんな動作で楽しんでる。そんなセーリングもあり、実に楽しそうです。自分で操ってる実感がある。

モーガンフリーマンは外洋にチャレンジを見出した。でも、外洋である必要は無い。こんなに近場でも面白いセーリングができるのです。それも短時間で、シングルで、そういうセーリングをこれまで見逃してきました。海は遠くにだけあるわけではありません。近場も同じ海です。遠くと近くでは、乗り方が違う。時間が違う。遠くにチャレンジを見出す人はそうすれば良い、でも、近場でも面白いセーリングはできるんですよと申し上げます。

オフショア、コースタル、そしてインショア、近場になればなる程、スポーツ性を高める。チャレンジの内容はそれぞれ違いますが、もっとも手軽にできるインショアのスポーツ、ダンスセーリングにチャレンジしてみませんか?こんな楽しみ方もあったのか、と気づきました。

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