第五十四話 ロングクルージング

ロングと言いましても、いろいろです。その日の夕方にはどこかに入るという沿岸クルージングでは、デイセーリングの積み重ねとも言えますし、どこにも寄らないで走りっぱなしというロングもあります。前者はデイセーリングの積み重ねですから、アレリオンやノルディックフォークでも可能です。ただ、キャビンの狭さを考えますと、何日も何日もヨットに泊まる事を考えますと、ちょっときついかもしれません。ホテルに泊まるなら別ですが。後者では、ロング用のヨットがあります。これらは、日常で気軽に出すにはちょっとという場合もありますが、ロングで走りますと楽です。

それで、近場のセーリングを重視するのか、ロングを重視するのか、その辺が問題になりますが、例えば、1回きりのロングで、後はづっと近場なら、それにロング用というのもどうかなと思います。また、そのロングがどんなロングかにもよります。ロング用のヨットを買って、ロングに行き続ければ良いのですが、そうでは無い場合、やはり日常にに乗らなくなるケースも少なく無い。ならば、ロングを諦めて、日常で面白いセーリングをしょっちゅう堪能するのはいかがですか?というのが私の提案です。諦めてというのは、響きが悪いので使いたく無い言葉ですが、私の知り合いで、日本一周した後、ヨットを買い換えて、デイセーリング中心に遊んでいる人が居ますが、これなど賢い方法だなと思います。何回も何回もロングに行かれる方は稀ですから。

日常は誰でもデイセーリングを堪能したいと思われると思います。でも、たまに遠出もしたいとも思われる。その遠出がどんなものかによってきます。そこが難しいところです。遠くには行かなくて良いとはっきり割り切れれば、事は簡単です。ロング主体に一回出れば、数ヶ月は帰ってこない乗り方をいつもするなら、簡単です。ところが大半の方々はそうは割り切れない。それで、その中間的なヨットにされる。

ノルディックフォークやアレリオンなんかは、ヨットを始める方が最初にセーリングの面白さを堪能するには良いと思います。そして、ベテランの方で、もう遠くに行かなくても良い、キャビンライフも卒業だ、もっとセーリング自体を気軽に楽しみたいという方へもお奨めです。たまに本格外洋も目指すが、それ以外はデイセーリングだと言われるなら、セーバーヨットです。或いは、イタリアのコメットヨットです。

それぞれに特徴があって、どんな乗り方をするかによって選択は変わってきます。乗り方が明確になればなる程、ヨットの選択は簡単になり、より堪能する事ができますから、自分の乗り方を知る事が重要です。でも、これは頭で考えただけでは無理がありますので、実際に乗って、何度も乗って、その中から自然に生まれてくるものですから、必然的に買い替えという事が出てきます。実際、生涯買い替えなしという方の方が少ないですし、買い替え無しで済めば、それはラッキーだと思いますね。それで、買い替えしないで良いように何でも出来そうなヨットにされる。それがまたうまく行かないケースは非常に多いですね。やはり、最初はセーリングをする。それを中心に据える事が大事かと思います。セーリングならではの醍醐味を最初に味わっておくべきだと思いますね。
とにかく乗る事が重要だと思います。そうしますと、自分がヨットのどこに魅力を感じるかが解ってきます。その間に、ヨットに寝泊りするかもしれない、宴会する事もあるでしょう、そしてセーリングしてどんな感じを持ったか、そういう総合によって、自分はヨットのここが面白いというのが出てきます。でも、頭の中だけで考えていますと、いつまでたっても解りません。

日本の今すべきことは、乗る事です。どんどん乗って、どんな自分であるかを見つけ出す事です。環境は人を変えると言いますが、環境は人を明らかにする。本来の自分が環境によって出てくる。
それは行動と感性ではないかと思います。自分が解ったら、後は楽しむだけです。他の誰よりも面白いヨットライフが創造できると思いますね。

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