第七十四話 ロングキール艇

昔、もはやロングキールなんかは不要であると言った事があります。でも、その後これを見直しています。何故、今更ロングキールなんか要らないと言ったかと申しますと、設計の向上によって、フィンキールでも直進性は良いし、強い船体もできる。外洋走るのにもはやロングキールである必要性は無いと思ったからです。これは一部は正しいと思っています。しかしながら、やはりロングキールのメリットは今でもある。

ロングキールの後進の舵効きの悪さはフィンキールとは違う。しかし、時化た時のあの波あたりの柔らかさは、フィンキール艇とは雲泥の差です。それを何時間も何時間も味わうとしたら、いくら船体が丈夫だと言っても、その乗り心地は全く違ってくる。波はデッキには上がりにくい。これは実際乗るととっても有り難い事です。それに波あたりの柔らかさは本当に有り難い。

船体の弱いヨットでは、波に叩かれて、その衝撃は大変なもの、時化てる時の現象ですから、そりゃあ生きた心地がしない。これが頑丈な船体になると、安心感は格別。そのうえ、波あたりが柔らかいと疲れ方まで違ってきます。こういう時のロングキールは実に有り難い。

そういうロングキールであっちこっちクルージングして回っている方にお会いしました。これにして良かった。そう心から言われる。台風の影響とその後の時化で、何日も何日も足止めをくらう。でも、いつまでも居れないから、思いきって出てきた。波は3m、強風の中を走ってきたが、それでも平気なのです。そういうヨットは人間をサポートしてくれます。

天候が良い時なら、ヨットは何だって良いかもしれません。でも、通常では無い時、ヨットの特徴は歴然と現れる。固い船体、造りの良さ、ロングキールの特徴、船型から来る特徴、そういう物が如実に現れます。だからこそ、同じサイズでも価格は違うし、船型にしても、今でもロングキール艇が建造されています。時化た時、古くなっていくに従って、その差が現れる。

ノルディックフォークとマリーホルムはロングキールを持っています。その安定感、波あたりの柔らかさ、頑丈さ、フィンキールに比べますと、操作性においてやりにくい部分も確かにある。しかし、その頼もしさは抜群です。強風においても、恐れる事無く、どんどん走れる。こういうヨットは強風で面白い。

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