第五十二話 デイセーリングの遊び方

1日のうち午前だけとか、午後だけとか、或いは丸一日、そういう使い方は最も多い使い方でもあるし、たいした準備も必要無く、最も気軽にセーリングを楽しめる方法です。こういう時は、どこかに行って、丘に上がって昼飯を、というのでは無く、また、宴会しながらのピクニックセーリングでも無く、できればセーリングそのもの、走りそのものを楽しんで頂きたいと思います。

デイセーリングでは目的地がありません。従って、いつまでにどこどこ迄というのがありませんから、純粋にいかに帆走をするかという事に専念できます。ホームポートから10マイル圏内ぐらいでしょうか、その海域をいかに面白くするかは、セーリング自体に神経を集中して、いかに帆走をするかを楽しむのにもってこいです。

ヨットはセールを上げれば、あとは適当にやってれば、それなりに走るものです。でも、そこでセールの角度や形状に気を使い、刻々と変化する風にセールをあわせてやると、最初は面倒かもしれませんが、だんだんとヨットがやっただけの反応を示してくれるのが解かってきます。そうしますと、操作して、ヨットが反応する、それが面白くなってきます。しょっちゅうセールトリムをやりますと、もっと効率良くやれないか、こういう風にシートをリードできればもっと楽にできそうだとか、いろんなやり方が解ってきます。それがもっとヨットを面白くします。

走れば、自分のヨットがどんなであるかも解ってきて、セールの事も解ってくる。自分の思うセーリングにおいて、どんな走りが面白いか、ヨットについてのいろんな事が解ってくる。これが自分のスタイルを築く始まりです。セーリングそのものを堪能しようと思ったら、デイセーリングが最も良い方法です。どこに行くわけでも無し、ただ、そこで、風に対しての登りとか、下りとか、そういう動きを楽しむ事ができれば、それで良いわけです。

旅は目的地を持ちます。目的地を持てば、急ぎます。時間が気になります。ならばエンジンで行くから計算ができます。セーリングを楽しんでたんじゃ、明るいうちに着けないかもしれません。でも、デイセーリングなら、時間を気にする必要はありません。それに時化てきたら、ちょっと我慢すればホームポートに帰る事もできます。

どんなヨットでもデイセーリングを楽しむ事ができます。ただ、シングルである場合、大きなヨットであればどうしてもオートパイロットに頼らざるを得ないかもしれません。或いは、大きくても、シングルで乗る方法を工夫する手もある。とにかく、いかにセーリングを堪能できるか、そういう工夫と実行で、セーリングに集中しさえすれば、それはスポーツと化し、誰でもヨットの醍醐味が味わえる。
初心者は初心者なりのレベルアップから、ベテランはもっと深いセーリングを目指す事ができます。全く同じ風の中でも、初心者とベテランは違う走りをする。そこには、セーリングの醍醐味が凝縮されています。デイセーリングは初心者用ではありません。オールマイティーなのです。ですから、今の自分の最高を目指す。そうやって乗り続ける事によって、セーリングが面白くなって、それこそデイセーラーがほしくなる。それが私の願いです。

セーリングが面白いと感じるようになるには、より多く知る事、上達する過程、そしてそれによって感じる事が必要になります。つまり、最初はどんどんのらなきゃ、解りません。そしてある程度解ったきた時が問題で、もっと楽しみたい、本当に醍醐味を味わいたいと思ったら、ある程度から先にもっと行くべきです。そこからがもっと面白くなるところです。

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