第八十五話 暴言

中古艇不足が叫ばれるようになって久しくなりますが、相変わらず市場には艇数が少ない。おまけに市場に出てるヨットも、毎年、年をとって、かなり古いのが多くなりました。そのせいか、レストアというビジネスはこれからのビジネスとして、徐々にではありますが増えていくものと思われます。それはそれとして、ヨット界をリードするのは新艇です。新艇の導入無くして、ヨット界は発展しませんし、まして中古も出てこない事になっていきます。ですから新艇導入を増やしていく事は不可欠なのではないかと思います。

誰だって、できれば新艇が良いと思うでしょう。中古の良さは、装備が整っている場合が多いし、不具合も出尽くして、整備されていれば、艇の状態は良い。但し、整備されていればですが。それに価格が安い。新艇では買えないヨットでも、中古なら手が届く範囲に入ってくる事もあります。確かに中古のメリットはあります。それにヨットは車と違って、何十年でも持ちますからね。

でも、だからと言って、皆が中古に行きますと、やがては中古も出なくなってきます。それではいけません。新艇を買える予算をお持ちの方は、日本中のみんなの為に、新艇を導入すべきです。それも予算があるなら、できるだけ良いヨットを導入すべきです。それはヨット文化の発展の為になります。できる方は、できる事をする義務があります。それを遠慮して、やらないのは謙虚と言えるかもしれませんが、ヨット文化発展のチャンスを放棄している事にもなります。決して、美徳では無いと思いますね?義務違反でもあります。

ビジネスで成功した方は、社会的にそういう義務があります。成功した相応の良いヨットを導入する義務があります。遠慮は不要です。それは自分の為でもありますが、同時にみんなの為でもあります。良いヨットに触れるチャンスをみんなに与えています。そしてやがて、それが中古になって市場に出て行く時、より多くの方々にそれを手に入れるチャンスを与える事にもなります。それを遠慮してやらないと、日本に良いヨットが入らない事になりますので、そのチャンスを与えない事にもなります。ヨットに限らず、良い物、たいした事無いもの、みんな必要です。その両方があるからこそ、みんなが判断できます。品質の違い、性能の違い、コンセプトの違い、違うものが無ければ解りません。ヨット文化をリードしていく方々がそういう義務をおって先頭を切っていく。どのヨットがどんな品質で、どんな性能を持ち、どんなコンセプトなのかを見極めて、そのリスクを背負いながら、リードしていく。楽じゃないですね。でも、それが後に文化として広がっていく事になります。成功者の義務でもあります。

それは高級艇かもしれませんし、ビッグボートかもしれません。或いは、コンセプトの異なる艇かもしれません。気に入らないヨットを導入する必要はありませんが、最も気に入ったヨットを導入して頂きたい。ですから、成功者は勇気が必要です。他人と違う事をしなければなりません。ですから、ヨットで遊ぶにしても大変なのです。でも、その分、良いヨットを味わう事ができます。ヨット界にも貢献できます。新艇を買われる方々はヨット文化の牽引者です。中古を買われる方は、それを育む方です。どちらも文化功労賞ものです。それによって、新しくヨットを始めようとする方々を増やしていきます。ヨットをやるのは自分の為ですが、同時に他に役立っている。自分の為であり、みんなの為、ですから、自分のヨットをほったらかしておくのは義務違反です。いつも、きれいにメインテナンスをして、気持ち良く乗って、味わい、そして手放す時は、次のオーナーも同じようにメインテナンスをして繋げていく。物を大事に、寿命をまっとうさせてやる。そうしたら、みんなが気持ちよく安心してヨットを味わう事ができるようになります。ヨット文化花盛り。

我々業者は、世界中からいろんなヨットを紹介します。それぞれが、それぞれの考え方を持って、ヨットを選び、日本に紹介する。それはレストランのメニュー作りです。和食、洋食、中華、全部を揃えるデパートもあれば、あるジャンルの専門店もあります。選ぶのはお客様です。メニュー作りは我々の義務、できるだけ正確に伝えるのが義務です。

私の義務は、キャビンヨット全盛の時に、別のジャンルのメニューを作っています。デイセーラーというメニュー、スポーツクルージングというメニュー、それと外洋というメニューの三つです。これで何とか日本のヨット文化に貢献できれば幸いです。

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