第十八話 時代の波

個人的な、自分だけの趣味なら、時代の波は関係ありませんが、他の人達に受け入れてもらいたいと思えば、時代に逆らってはならない。デイセーラーは時代の流れに対してどうか、と問われれば、波の中心には居ませんが、最先端だろうと思っています。最先端なだけに、なかなか誰にでも受け入れていただくというわけにはまいりませんが、多分、これら以上の先鋭的なヨットが欧米あたりで売れてきますと、このデイセーラーは何でも無いものになり、割り切るのが簡単になり、広く受け入れられるようになるのではないか?要は考え方次第、その考え方が変わるのが時代の波でしょう。

ヨットに限らず、何でもそうですが、より便利が求められ、より簡単が求められ、それでいて性能が高い、その高さを簡単に満喫できる。そういう流れだろうと思います。車でもオートマチック車が殆どですし、それはスポーツカーにも及んでいる。

デイセーラーはある部分において、オートマチック車に共通する部分があると思います。それは簡単操作です。オートマチック車のように、とりあえずセールさえ出せば走る。他のヨットと違う点は抜群のスタビリティー、それもバラスト比の38%とか45%とか、そんな数値で表す事のできない、飛びぬけた安定感を感じます。ですから、ライフラインなんか不要なのでしょう。抜群の安定性は操作がより簡単になります。そういう意味では、オートマチック車に似ている。

ところが、ヨットは純粋な遊びですから、簡単なだけでは面白くありません。それで、マニュアル車のようにギアチェンジをする範囲が設けてあります。このギアチェンジはしなくても、いい加減でも走る事はできますが、この操作をする事によって、遊ぶ事ができるというものです。それも楽にギアチェンジができる。簡単操作は初心者にもやさしく、ギアチェンジのレベルはベテランでも遊ぶ事ができる。

ヨットには車のスロットルに値する物が無い。風は今吹いている風以上の強さを造りだす事はできません。それで、セールを使って、風を最高レベルにまで取り入れる段階から、後はいかに風を抜くかという作業になります。つまり、最も風を取り入れるセールセットから、いかに風を逃がしてやるか、それもヨット本体とのバランスにおいて、ただ抜けば良いのでは無く、入れ過ぎず、抜き過ぎずというバランスを取る。そのバランスが最も面白いのかもしれません。

全ての操作は、風をいかに抜くかという作業になります。風が強いからと言って、いきなりリーフでは面白味に欠けますので、少しづつ抜いていく。そして船体とのバランスを見る。ここの部分も、もし、オートマチックになったら、ヨットは面白く無くなる。これは楽しみとしてとっておかねばならない。しかし、この操作をするのが大変な労力であるなら、それはまた時代の波に合わないので、操作自体が楽に出来るようになるのが、流れかと思います。ギヤチャンジはオートでは無い方が良いが、操作は簡単にできる。どこまで引くか等は、オーナーの意思に任せてある。この任せてもらった部分が面白さであります。

こういう意味で、デイセーラーは時代の最先端なのではないかと思っています。誰でも、簡単に動かす事ができて、セーリングを楽しむ事ができる。そして、自分のレベルに応じて、マニュアル部分を操作する事ができ、それに応じて帆走も変わる。何もハッスルする事無く、女性の体力でもOKなのであります。遊びの部分は、体力では無く、知力であります。そして、それを感じる心力であります。

何故、それがデイセーラーにあるかと言いますと、設計段階において、キャビンよりも帆走を重視したからだろうと思います。キャビンを考慮しますと、少なからず、天井の高さ、広さなどを考えますが、そういう事は二の次にした点が大きいのではと思います。そして、セールプランもジブをセルフタッキングにして、タッキングを楽にした。その代わりメインはでかい。そのでかいメインを操作する為に、電動ウィンチを採用したりしている。ちなみに、アレリオン28はウィンチなんか使わずとも、ジブもメインも片手で引く事ができます。強風時でもです。

帆走において、強風時、風下側のウィンチを巻くというのは、かなりの力を要する。それも下側ですからやりにくい。それが、簡単に片手でできるというのは、これは実に楽であります。楽なんですが、同時にトリミングの面白さはちゃんと味わえるわけです。

アレリオンなんかですと、ジブブームがさらにオートマ化を促進しているわけですが、他社の例えば、セーバー社のセーバースピリットなんかですと、ジブブームはありませんので、ランニングにおいては、ジェネカーの使用という事になりますが、これもファーラーを使えば、かなり楽でありますので、ジブブームよりは確かに手間はかかりますが、それでもかなり楽であります。

シングルでジェネカーのファーラーを使う場合、ジャイブは手間だと思う場合は、一旦巻き取って、メインを返して、それからまたジェネカーを開くという操作をすれば、もっと楽になります。

まあ、時代の波は、楽に、楽しく、それでいて、最高のセーリングを手に入れる事。キャビンはほとんど最高点に近づいてきました。エアコンまで装備すれば、後は、何が必要でしょうか?家庭にある物は殆ど設置できる。次は、セーリングです。楽なセーリングで、面白いセーリングだろうと思います。そういう意味ではデイセーラーは最先端ではなかろうか、と思う次第です。

レーサーはレーティングという縛りをどうしても避ける事はできませんが、自分だけで遊ぶなら、それらも関係無い。自由にできます。キャビンも充実して、セーリングも楽というのは、今のところは無さそうです。あるとするならでかいヨットになる。電動や油圧を駆使してのセーリングになるでしょう。それはそれで楽にできますが、あまりにでかいとシングルではちょっと気持ちで負けるかも?

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